外国映画

『黒い司法 0%からの奇跡』 感動的で泣かせる話だが……

冤罪で死刑にされた黒人のために、アメリカの司法と闘ったブライアン・スティーヴンソンの実話をもとに作品。かつて『アラバマ物語』の舞台ともなったアラバマ州では、黒人は生まれながらにして罪人として扱われている。ブライアンはそんな場所で無実の黒人を助けることができるのか? 涙なしには見られない作品となっているのだが……。
外国映画

『ミッドサマー』 自分はそのままに世界を変える

家族を亡くして精神的に不安定なダニーは、恋人クリスチャンやその友人と共にスウェーデンを訪れる。ホルガと呼ばれる村で90年に一度行われる祝祭を体験するためだ。 自分たちが依拠する文化とは全く異なる世界。そんな場所でメンヘラ女性であるダニーはいつの間にかに癒されることになるのだが、それはなぜか?
外国映画

『名もなき生涯』 やはり物語はあったほうがいい

実在した農夫フランツ・イェーガーシュテッターの人生を描いた伝記映画。詩的なイメージが展開していく独特なスタイルを持つテレンス・マリックだが、本作は「良心的兵役拒否を貫き死刑にされた」という物語がはっきりしているため、それなりに取っつきやすい作品になっている。アルプスの山々を臨む雲の上の世界はまるで天国のようでもあった。
外国映画

『ドミノ 復讐の咆哮』 ハリウッドから遠く離れて

久しぶりのブライアン・デ・パルマ監督の最新作。 デンマーク市警のクリスチャンは、イスラム過激派が関わる事件に巻き込まれる。クリスチャンの失敗により相棒が犠牲になり、彼は独自に犯人を追うことに……。 随所にデ・パルマらしさは感じられるものの、脚本の出来の悪さもあり、資金不足でチープな感が目立つ作品になってしまったかも。
外国映画

『1917 命をかけた伝令』 確率の問題

アカデミー賞で撮影賞、録音賞、視覚効果賞の3部門を受賞した作品。 作戦の中止を伝えるための伝令役の主人公を追って、全編ワンカット風に進んでいく戦争映画。塹壕を歩き回り、ノーマンズランドを這い、敵兵が潜むかもしれない街をくぐり抜けていく。物語は単純だが、見せ方はうまい。観客も戦場を走り回るような気分になるかも。
日本映画

『37セカンズ』 知ってしまえば怖くない

脳性麻痺によって身体に障害を抱えたユマ。本作ではその障害のある主人公を、実際の当事者が演じている。それだけに嘘くさくならずに真っ直ぐに伝わるものがあるだろう。健常者は障害者と出会うことはそれほど多くはない。知らないからこそ構えてしまうこともあるわけで、障害者を知ればそんなことはなくなるのかもしれない。
外国映画

『巡礼の約束』 旅の途中で

チベット人監督ソンタルジャの最新作。 チベットの山あいの村に住むウォマは、五体投地で聖地ラサへと巡礼することを宣言する。半年以上もかかるという難行に夫のロルジェは反対するのだが……。 ウォマはなぜ五体投地での聖地巡礼を決断することになったのか? それによって何を求めているのか?
外国映画

『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』 「選択の自由」という悩ましさ

監督は『ナチュラルウーマン』などのセバスティアン・レリオ。 かつて同性愛の関係がバレてユダヤ・コミュニティを飛び出したロニートと、そこに留まり男性と結婚することを選んだエスティ。 ユダヤ教のラビ曰く、人間には「選択の自由」があるというのだが、選べることがかえって悩ましいこともあるようだ。
外国映画

『ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を』 架空の世界に無国籍な美女が集う

『ツバル』『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』などのファイト・ヘルマー監督の最新作。ガラスの靴の代わりに青いブラジャーの持ち主を探し回るファンタジー。撮影された場所はアゼルバイジャンらしいが、本作は架空の世界の出来事に感じられる。さらに登場してくる女性たちも様々な国の出身で、無国籍感が漂う作品だ。
日本映画

『ロマンスドール』 ロマンスの神様のいたずら

ラブドール製作会社に勤める哲雄(高橋一生)は、そのことを妻の園子(蒼井優)には秘密にしていた。秘密はさらなる秘密を生み、結婚生活は次第にこじれてくることに……。 ふたりがそれぞれの秘密を共有したとき、結婚生活は壊れてしまうのか否か? タナダユキ監督が『百万円と苦虫女』以来久しぶりに蒼井優とコンビを組んだ最新作。
日本映画

『his』 理想論だけれど涙を禁じ得ない

先週『mellow メロウ』が公開されたばかりの今泉力哉監督の最新作。 主人公の迅が都会の生活を捨てて山の中でひっそり暮らしているのは、彼が同性愛者だから。しかしそこにかつての恋人・渚が娘を連れて現れて……。 本作では迅と渚はそれぞれある決断をすることになるが、予想していたのとは違う決断で大いに泣かされることになった。
日本映画

『mellow メロウ』 片想い至上主義を推し進めると

『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』などの今泉力哉監督の最新作。 監督自身が「片想い祭り」と呼ぶこの作品は、まさに今泉監督のエッセンスを純粋培養したようなものとなっている。余計なものを排除してただ片想いに耽ることになる登場人物たちを見ていると、片想いって素晴らしいという気持ちになってくる。