『SHADOW/影武者』 チャン・イーモウの武侠物では一番の出来?

外国映画

『紅いコーリャン』『HERO』などのチャン・イーモウ監督の最新作。
物語の原案となっているのは「三国志」の荊州争奪戦とのこと。

物語

ペイ国は領土である境州を奪われながらも、敵国の炎国と休戦協定を結んでいた。妹と共に沛国を支配する王(チェン・カイ)は平和派だが、重臣の都督(ダン・チャオ)に従う開戦派は領土を奪われた状況に甘んじることに屈辱を感じていた。ある日、都督は炎国の楊蒼将軍に勝負を申し出るという勝手な行動に出るのだが……。

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王と都督と影武者、それぞれの思惑

王を差し置いて勝手な行動に出た都督だが、実は彼は影武者だ。本当の都督(ダン・チャオの二役)は病で屋敷の奥に隠れている。王はそんな影武者を疑うような素振りもあるのだが、影武者は機転を利かせて何とか切り抜ける。

王と都督と影武者、それぞれの思惑が交錯する心理戦が展開していく。さらに影武者と都督の間には小艾シャオアイスン・リー)という奥方も介在している。奥方は本当の都督に忠誠を誓っているが、一方で寝食を共にしている影武者に対する同情もある。都督は領土を取り返して自分が王となった暁には、影武者を自由にするというのだが……。

(C)2018 Perfect Village Entertainment HK Limited Le Vision Pictures(Beijing)Co.,LTD Shanghai Tencent Pictures Culture Media Company Limited ALL RIGHTS RESERVED

チャン・イーモウの武侠物

チャン・イーモウの武侠物としてはHEROLOVERSなどがある。SHADOW/影武者』もそうした系列の1本だが、個人的にはそのなかでは最も成功した作品だと思う。

本来、チャン・イーモウはカラフルな色合いを好む人だが、本作ではそうした色を排除して水墨画のような映像を作り上げている(黒のグラデーションが繊細)。黒を基調にした建物と、7日間も降り続く雨という設定で空には常に雨雲が垂れ込めている。衣装も白と黒で作り上げており、全編独特な美意識に貫かれた映像を見せてくれるのだ。

HERO』や『LOVERS』は『侠女』などで知られるキン・フーあたりの武侠物を意識しすぎていたきらいがあり、飛んだり跳ねたりという作品だったが、本作は派手なアクションは控えめだ。それでも戦隊ヒーロー物めいた主人公たちがモンスターと戦う『グレートウォール』のような作品もあるチャン・イーモウだけに、妙なアイテムも登場する。それが傘をモチーフにした見たこともない武器だ。

敵方である楊蒼将軍の太刀に対する、影武者の傘の武器は、劇中に度々登場する太極図に見られる陰陽の思想によって説明されている。これは漫画『北斗の拳』で言えば、ラオウの「剛の拳」に対するトキの「柔の拳」のようなものだろう。薙刀のような大きな刀で切りかかってくる楊蒼将軍に対し、影武者は傘の武器でいなしながら闘うことになる。もちろんツッコミどころは多々あるのだが、白と黒を基調にした画に赤い血が流れるという美意識もあって、なかなかの見せ場になっていたと思う。

この決戦の舞台では、同時に都督と奥方・小艾との琴でのせめぎ合いがモンタージュされ、小艾が琴の弦を弾くように影武者が刀を弾いて楊蒼将軍の首を斬るという、これまたあり得ない決着も見事だったと思う。

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その他の見どころ

都督と影武者を演じるのがダン・チャオ。同じ役者が演じているのに、造形を変えすぎていて影武者なのに別人に見えてしまうのは愛嬌だろうか。一応、設定としては都督は1年前の刀傷で病を負って老けてしまったということになっているのだが……。

そして、奥方の小艾を演じているのはスン・リーというダン・チャオの本当の奥様とのこと。都督と影武者は小艾を巡る三角関係のような状態になるのだが、闘いの前の最後の夜に同情からか小艾は影武者に抱かれることになる(しかもこの場面は夫の都督に覗かれている)。ラブシーンはともかくとして、小艾の涙が頬を伝って首筋から胸元あたりに流れていくあたりがとてもよかった。かつてのチャン・イーモウ作品『菊豆』あたりはとてもエロかったなあなどと思い出したりもした。

戦闘が終わった後も影武者と王と都督の睨み合いが残っていて、最後まで飽きさせないエンターテインメント作品になっていたと思う。小艾役のスン・リーが大人の女性の魅力を感じさせ、一方の王の妹役を演じた愛らしいクアン・シャオトンはじゃじゃ馬娘っぽく戦闘でも大暴れするなど脇役陣も映えていた。日本ではあまり話題にすらなっていないような気もするが見逃すのはもったいないかも。

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