『レンフィールド』 主従の狂気対決?

外国映画

監督は『レゴバットマン ザ・ムービー』などのクリス・マッケイ

主演は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』『モンタナの目撃者』などのニコラス・ホルト。共演には『月の輝く夜に』『PIG/ピッグ』などのニコラス・ケイジ

本作は日本では劇場未公開で、11月8日にソフトがリリースされた。

物語

ドラキュラの部下としてこき使われているレンフィールド。
自分に自信が持てず上司には辞めたいと言い出せない…かと言って、
言ったとしても辞めさせてくれない上司。
そんな彼が、普通の人間としての生活を取り戻すために、ドラキュラに反旗を翻す。
「ボスにここまで言われる筋合いはない! もっと幸せになる権利があるんだ!」

(公式サイトより抜粋)

レンフィールドとは?

本作はドラキュラのサブキャラクターであるレンフィールドを主役としたホラー・コメディだ。レンフィールドというキャラはもともとの原作でも脇役であり、もしかするとそれほど重要なキャラでもないのかもしれない。多分、レンフィールドが登場しないドラキュラ映画のほうが多いのだろう。

それでもドラキュラにはレンフィールドのような下僕が必要だ。ドラキュラには様々なパワーがあるけれど、基本的には太陽の光の下では活動できないわけで、雑務をこなす手下が必要だからだ。それがドラキュラとレンフィールドの関係で、レンフィールドはドラキュラのことを「マスター」と呼ぶ。

ドラキュラを題材とした古典として名高い1922年の『吸血鬼ノスフェラトゥ』F・W・ムルナウ監督)では、レンフィールドはなかなかの活躍をしていて印象に残っている。ちなみに『吸血鬼ノスフェラトゥ』という作品は、原作である『吸血鬼ドラキュラ』の映画化の権利を持っていなかったから、ドラキュラ伯爵はオルロック伯爵になっているし、レンフィールドはノックという名前になっている。それでも中身は『吸血鬼ドラキュラ』の映画化だ。

『吸血鬼ノスフェラトゥ』におけるオルロック伯爵=ドラキュラ伯爵はかなり薄気味悪いキャラだけれど、大物の余裕なのか静的なキャラとなっている。一方でノック=レンフィールドは、精神病院の患者でもあり、虫を食べるという奇癖を持つ狂人だ。下僕のレンフィールドはマスターと対照的に動的だ。精神病院を逃げ出して町の人たちに追い回されたりして暴れ回ることになる。そんなレンフィールドの狂気ぶりがインパクトがあったのだ(尤も、『吸血鬼ノスフェラトゥ』は無声映画だから取っつきにくいかもしれないけれど)。

© 2023 Universal Studios. All Rights Reserved.

現代風アプローチ?

『レンフィールド』では、そんなドラキュラとレンフィールドの関係を現代風にアレンジしている。パワハラ上司とそれに辟易している部下という関係だ。現代ならパワハラ上司の無理難題なんて「勘弁してください」ということになるわけで、本作のレンフィールド(ニコラス・ホルト)はドラキュラ(ニコラス・ケイジ)との腐れ縁みたいなものを断ち切りたいと考えているのだ。

レンフィールドはドラキュラのための獲物を狙っていて、ある集会に参加することになったらしい。その集会は「依存する被害者を救う会」というものだ。暴力的な男に支配されつつも、自分が居なくては彼はダメになってしまう。そんなふうに考えてしまう女性がいる。そんな関係性を「共依存」というわけだが、そんな人たちの自助グループの集会で、レンフィールドはその参加者たちと自分のことを重ねている。

「共依存」というのは、互いが互いに依存していて自立することができないということだ。ドラキュラはレンフィールドの手助けを必要としているし、レンフィールドもドラキュラのパワーが必要だ。レンフィールドは長年の依存体質によってそんなふうに自信を失っていたわけだけれど、自助グループでの話などをきっかけに、たまたま出会った女性警官レベッカ(オークワフィナ)が語るように「言いなりの人生はイヤ」だと感じ、マスターの支配から抜け出そうとすることに……。

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主従の狂気対決?

冒頭部分はなかなか飛ばしていて楽しませてくれる。ドラキュラの恐ろしさも感じられるし、回想場面として原作の『吸血鬼ドラキュラ』をそのまま映画化したかのようなモノクロ映像を挿入したりもしている。その中にはちょっと前に公開された『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』で描かれた海のシーンもあったりする。

とにかくかなりコンパクトにヴァンパイアハンターとの闘いを見せ、あっという間にドラキュラは丸焦げになってしまうのだが、なかなかのしぶとさを持つドラキュラは完全に息絶えるわけではないのだ。

本作の主役はもちろんレンフィールドなのだが、虫を食べてパワーアップするというおもしろさはあるものの、マスターであるニコラス・ケイジ扮するドラキュラの狂気ぶりに押され気味な感じもした。レンフィールドの狂気よりも、マスターであるニコラス・ケイジの狂気のほうが勝っているのだ。

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ニコラス・ケイジは『バンパイア・キッス』という映画で、自分のことをドラキュラだと勘違いしている役を演じたらしい。今回はまさにその念願のドラキュラ役ということで、気合いが入っていたのだろうか。

さらにニコラス・ケイジは自分の製作会社で『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』という作品のプロデューサーまでやっているとのこと。こちらでは出演はしていないようだが、これはムルナウ版の『吸血鬼ノスフェラトゥ』の主演役者が本物のドラキュラだったという話らしい。多分、ニコラス・ケイジはドラキュラという題材が大好きなのだろう。

そんなわけで本作はニコラス・ケイジ自身が楽しんでやっている感じがして、最後にレンフィールドにボコボコにやられている表情なんかを観ていると笑ってしまう。そんな意味でニコラス・ケイジを堪能する作品になっている。

本作は血みどろのホラー映画であり、それなりに見せ場もあるアクション映画でもある。ついでにミュージカルも取り入れようとしたのか特典映像にはそんなシーンも入っている。かなりごちゃ混ぜの映画だが、レンタルで観るのなら十分楽しめる作品なんじゃないかとは思う。

主役のニコラス・ホルトとしては、同じニコラスのケイジにいいところを奪われてしまった形かもしれないけれど、現代風に風貌を変えようとしてダサい感じになってしまうあたりはおかしかった。

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