テレビドラマ

『テセウスの船』 彼は昔の彼ならず

殺人犯の息子として日陰者として生きていた田村心は、タイムスリップして事件が起きる前の父親と会うことになる。そして、父親が犯罪とは縁遠い正義感に溢れた人間であったことを知る。心は父親の冤罪を晴らすために奔走する。今年の1月から放送され高視聴率を獲得したテレビドラマ。今さらだがParaviで配信中なので観てみることにした。
外国映画

『若者のすべて』 われわれが待望するもの

ドロンが演じるロッコはドストエフスキーが『白痴』で描いた「聖なる愚者」に連なるような存在だ。とにかく信じられないほどの善人であるロッコは、都会に来て堕落してしまった兄シモーネから散々酷い目に遭いつつも彼を見捨てないのだった。
外国映画

『コンテイジョン』 予見ではなくシミュレーション?

ついに緊急事態宣言が出されるまでになった新型コロナウイルスで、改めて注目されることになった2011年の作品。本作が話題となったのは、この映画が現在世界中で起きている出来事を予見していたように見えるからだろう。映画で描かれるのは架空のウイルスの話なのだが、新型コロナウイルスという災いを知るためにも極めて役に立つ。
外国映画

『STOP』 かき消される貴重な声

キム・ギドクが3.11を描いた作品。日本では2017年の5月に一部劇場で公開されたが、ソフト化もされていない。そんなレアな作品がU-NEXTで配信中。 ギドクが日本にやってきてわずか7日間で撮影したというだけに、拙い部分は見受けられる。それでも本作には伝えるべきメッセージがあるというのがギドクの信念なのだろう。
外国映画

『人間の時間』 人類の行く末は?

スキャンダルで公開が延期となっていたキム・ギドク作品。 なぜか急に空へと浮かんだ船に閉じ込められた乗客たち。残された食料は限られ、船上は弱肉強食の世界と化していく。 ギドクが独自に解釈した聖書の物語とも言える作品で、「なんてことを考えるんだ」と絶句するしかない突飛な展開で、ファンとしては久しぶりのギドクを堪能した。
外国映画

『ジョン・F・ドノヴァンの死と生』 「世界」と「自分」

『わたしはロランス』『Mommy/マミー』などのグザヴィエ・ドラン監督の最新作。 ジョン・F・ドノヴァンというスターが若くして死ぬ。彼と密かに手紙をやり取りしていたルパート少年は、その後その手紙をもとにした本を出版する。そこにはジョン・F・ドノヴァンがなぜ死ななければならなかったかについて書かれていた。
日本映画

『Fukushima 50』 素朴な疑問を

3.11に発生した東日本大震災。福島第一原子力発電所では全電源を喪失し、原子炉がコントロール不能という状況に陥る。あの日、原発では何が起きていたか。それを忠実に再現した作品。 原発事故の恐怖を知らしめるには役に立つ作品と言えるのだが、一方でそんなことを引き起こした原因についてはスルーしているのはなぜなんだろうか?
テレビドラマ

『チェルノブイリ』 真実を隠すための物語

1986年のチェルノブイリ原子力発電所事故を描いたドラマシリーズ。かつては他人事だったチェルノブイリも、3.11を経験した今となっては切実なものに感じられる。なぜ人間の力でコントロールできないようなものを作ってしまったのと思わざるを得ないからだ。現在公開中の『Fukushima50』と共にぜひともおさえておきたい作品。
外国映画

『レ・ミゼラブル』 イッサに何が起こったか

マチュー・カソヴィッツの『憎しみ』のようなパリ郊外(バンリュー)を描いた作品。モンフェルメイユという街はユゴーの小説『レ・ミゼラブル』の舞台ともなった場所だが、今では移民などの低所得者層が多く住む地域。それぞれのグループが徒党を組みヤクザの抗争のような状態にある街が、ある少年のいたずらによって一触即発の事態へ……。
外国映画

『黒い司法 0%からの奇跡』 感動的で泣かせる話だが……

冤罪で死刑にされた黒人のために、アメリカの司法と闘ったブライアン・スティーヴンソンの実話をもとに作品。かつて『アラバマ物語』の舞台ともなったアラバマ州では、黒人は生まれながらにして罪人として扱われている。ブライアンはそんな場所で無実の黒人を助けることができるのか? 涙なしには見られない作品となっているのだが……。
外国映画

『ミッドサマー』 自分はそのままに世界を変える

家族を亡くして精神的に不安定なダニーは、恋人クリスチャンやその友人と共にスウェーデンを訪れる。ホルガと呼ばれる村で90年に一度行われる祝祭を体験するためだ。 自分たちが依拠する文化とは全く異なる世界。そんな場所でメンヘラ女性であるダニーはいつの間にかに癒されることになるのだが、それはなぜか?
外国映画

『名もなき生涯』 やはり物語はあったほうがいい

実在した農夫フランツ・イェーガーシュテッターの人生を描いた伝記映画。詩的なイメージが展開していく独特なスタイルを持つテレンス・マリックだが、本作は「良心的兵役拒否を貫き死刑にされた」という物語がはっきりしているため、それなりに取っつきやすい作品になっている。アルプスの山々を臨む雲の上の世界はまるで天国のようでもあった。