『ゴールデンカムイ』 乞うご期待?

日本映画

原作は野田サトルの同名漫画。

監督は『HiGH&LOW THE MOVIE』などの久保茂昭

主演は『キングダム』シリーズなどの山﨑賢人

物語

日露戦争での鬼神のごとき戦いぶりから「不死身の杉元」の異名を持つ杉元佐一。ある目的のため一獲千金を狙う彼は、北海道の山奥で砂金採りに明け暮れていた。そんなある日、杉元はアイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った「のっぺら坊」と呼ばれる男は、捕まる直前に金塊を隠し、その在処を暗号にした刺青を24人の囚人の身体に彫って彼らを脱獄させた。金塊を見つけ出すべく動き始めた杉元は、野生のヒグマに襲われたところをアイヌの少女アシㇼパに救われる。彼女は金塊を奪った男に父親を殺されており、その仇を討つため杉元と行動をともにすることに。一方、大日本帝国陸軍第七師団の鶴見篤四郎中尉と、戊辰戦争で戦死したとされていた新選組副長・土方歳三も、それぞれ金塊の行方を追っていた。

『映画.com』より抜粋)

人気漫画の映画化

二百三高地の激戦を生き残り「不死身の杉元」と呼ばれた杉元佐一(山﨑賢人)と、アイヌとして北海道の過酷な自然を生き抜く術を知っている少女アシㇼパ(山田杏奈)。そんなコンビがお宝を巡って協力し合うことになる。ただ、お宝を狙っている者たちはほかにもいて、大日本帝国陸軍第七師団の鶴見中尉(玉木宏)たちや、新選組副長・土方歳三(舘ひろし)のグループもいて、三つ巴の闘いとなっていくことに……。

冒頭の二百三高地の闘いは迫力があったし、杉元とアシㇼパのコンビのやり取りもオソマ(うんこ)ネタなんかもあっておもしろい。そんな意味では十分にエンターテインメントにはなっているのだけれど、原作漫画を読んでない者としてはやはり中途半端なところで終わってしまった感は否めない。

人気漫画の映画化で主演が山﨑賢人。どうしても『キングダム』シリーズを思い浮べてしまう。というか制作プロダクションは『キングダム』シリーズと同じところが関わっているようで、『ゴールデンカムイ』も、『キングダム』シリーズと同じように終わりが見えない状態ということになる。

それでも映画の評判が悪くないのは、原作漫画が好きな人たちが実写化作品として原作に忠実であることを評価しているからだろう。そもそも本作自体が漫画原作が好きな人に向けて作られているようにも感じられた。それ自体は悪いことではないのかもしれないけれど、壮大な予告編あるいはプロローグだけを見せられた感じもしてしまった。

©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

スポンサーリンク

 

乞うご期待?

原作を読んでいない者からすると、多くのキャラがいきなり登場するからあまり区別がつかない。本作では尾形百之助というキャラはほとんど活躍してないのに、なぜかそれを演じた眞栄田郷敦は三番目にクレジットされている。予定されているはずの続編では重要なキャラになるということなのだろうか?

今後、杉元とアシㇼパというコンビの関係はどうなるのだろうか? おもしろいのは杉元のアシㇼパに対する呼びかけ方で、アシㇼパが杉元を呼び捨てにするのに対し、杉元はなぜか「アシㇼパさん」という呼ぶことになる。これは命を助けられているアシㇼパに対する敬意ということなのか、あるいはアイヌに対する敬意なのか、そのあたりはよくわからないままだった。

それからラストには杉元がお宝を狙っている理由が明らかにされる。戦場で亡くなった親友の奥さんである梅子(高畑充希)の目を治してやりたいからということになる。そうなってくるといい関係になりつつあったアシㇼパとの三角関係みたいになるのか否か。漫画を読んでいない者としてはそんなことが気になったのだが、一体どんな展開となるのか「乞うご期待」といったところで終わりになってしまった。

漫画の映画化作品は、原作漫画のファンも映画館に足を運ぶことになるし、人気漫画ならおもしろさは保証されているようなもので間違いがないということになるのだとは思うけれど、1つの映画作品として観るとすると続編ありきの作り方はどうにも中途半端な気はする。

ちなみに漫画は全31巻という長編で、本作で描かれたのは3巻くらいまでのエピソードなんだとか。このままのペースで映画化していくとすると、全部で10本の映画が出来上がることになるわけだけれど、一体何部作を予定しているのだろうか?

©野田サトル/集英社 ©2024映画「ゴールデンカムイ」製作委員会

グルメ漫画と愛すべき脇役

実は映画の後になって漫画を読み始めた。というのも、現在は映画化記念のキャンペーン中で無料で読めるからだ。以下は原作漫画について。

漫画を読んでみると、映画版はかなり忠実に作られていることがよくわかる。意外だったのは、アシㇼパが漫画版ではかなり幼い女の子といった感じのところだろうか。映画でアシㇼパを演じている山田杏奈はそれほど幼いわけではないし、山﨑賢人との年齢差を感じなかったからこそ、恋愛に発展することもあるのかと思っていたのだけれど……。

原作漫画はまだ3分の1くらいしか読んでないのだが、アイヌの文化がかなり詳しく描かれていて、最初のほうはグルメ漫画みたいな趣きがある。リスから始まりカワウソや馬にヒグマ。生きるために何でも食べてしまうのだけれど、子熊だけは食べずにイオマンテの儀式に使うために村で大切に育てることになる。この儀式に関しては『アイヌモシㇼ』で詳細に再現されていた。

それから刺青を彫られた罪人たちのエピソードが楽しい。のっぺらぼうに刺青を彫られたのは24人ということで、それぞれのエピソードが用意されているということなのだろう。最終的な目的はお宝を見つけることだけれど、罪人たちのそれぞれのエピソードがキモなのかもしれない。

杉元に殺されたいと考えて迫ってくる辺見和雄とか、どう見ても勝新太郎をモデルにしている同性愛者のヤクザ者など、愛すべき脇役キャラが登場するのだ。とはいえ、これらは本筋であるお宝探しからは脱線気味のエピソードなので、続きを映画化するとしても省略されてしまう可能性が高い気がする。それでも原作漫画が人気なのは、そっちの脱線気味の部分にあるのかもしれないとも思えた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました