『ソング・トゥ・ソング』 独自のスタイルは変わらず……

外国映画

『天国の日々』『名もなき生涯』などのテレンス・マリックの2017年の作品。

物語

音楽に夢を抱いているフェイ(ルーニー・マーラ)は、有名なプロデューサーであるクック(マイケル・ファスベンダー)と付き合っていた。同じ頃、売れないソングライターのBV(ライアン・ゴズリング)はパーティーでフェイと出会い、想いを寄せることになり、フェイの気持ちもBVへと傾いていく。

一方で自由な恋愛を楽しむクックは、夢を諦めてウェイトレスをしているロンダ(ナタリー・ポートマン)と付き合い、結婚することになるのだが……。

(C)2017 Buckeye Pictures, LLC

 

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独自のスタイルは変わらず……

予告編なんかを見ると、これまでのマリック作品の高尚な感じとは異なり、ごく普通の恋愛模様が描かれるのかと予想していたのだが、実際にフタを開けてみるとスタイル的にはまったく変わっていなかった。通俗的でよくある物語を描くのだが、その独自のスタイルは貫いたままだから、物語は違ってもマリックのほかの作品と似たような雰囲気の作品になっている。

昨年公開された『名もなき生涯』のほうがわかりやすい物語が存在していたように思えたのだが、調べてみると本作はそれよりも前に撮られた2017年の作品とのこと。マリック作品も少しずつは観客にわかりやすい映画になってきているのかもしれない。

(C)2017 Buckeye Pictures, LLC

詩的イメージで描く物語

物語を辿れば、クックとフェイが付き合っているところに、BVが割って入る形で三角関係となり、それにBVが気づいたことで、フェイとBVは別れることになる。それからフェイはゾエイ(ベレニス・マルロー)という女性と付き合い、BVはアマンダ(ケイト・ブランシェット)と付き合ったりもするもするのだが、再会したふたりはヨリを戻すことになる。こんなところが大筋ということになる。

さらにサイドストーリーとしてクックとロンダの話があり、ロンダはクックに乞われて結婚するのだが、音楽界の成功者であるクックとの生活は何不自由ないものだったはずだが、なぜかロンダは自殺してしまうことになる。

こうして文字にするとひどくわかりやすい話なのだが、スタイル的にはいつものマリック節なので、すべてが過去から振り返った詩的なイメージのように展開していくために、散文的な普通の映画とは異なる作品になっている。

それでも『ツリー・オブ・ライフ』のように延々と宇宙の誕生についての描写が続いたりもしないし、『トゥ・ザ・ワンダー』のように神との対話めいたモノローグばかりでもしないし、『聖杯たちの騎士』のようにアーサー王伝説のような下敷きとなっている教養が必要とされたりもしない分、意味不明な映像ばかりといった苦痛を感じるようなことは抑えられていた気もする。とにかく登場人物はみんな美男美女ばかりで、それをエマニュエル・ルベツキのカメラがひたすら美しい映像として捉えていくわけで、見目麗しい作品であることは間違いない。

(C)2017 Buckeye Pictures, LLC

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音楽業界とサクセス・ストーリー

成功の夢を追う人たちの姿を描く本作では、夢を叶えるかもしれない力を持つクックの周囲に人が集まることになる。しかし、すでに手に入る物はすべて手に入れた成功者であるクックも、ロンダとの関係で悲劇を背負うことになるし、フェイにしてもBVにしても夢を諦めることになる。BVは音楽をやめ、肉体労働で生計を立てることになり、フェイはBVについていくことになるのだ。

音楽界を舞台にしつつ、ライブに乗り込んで撮影を敢行したとされる『ソング・トゥ・ソング』だが、あまりライブの音源を使っているようには思えないし、名のある本物のミュージシャンが登場するにも関わらず音楽そのものの重要度が高くないようにも感じるし、マリックもそこにはそれほど興味を抱いていないようにすら見える。

それでも本作が音楽業界を題材としているのは、その業界では成功すると限りなく華やかな世界を手に入れることになるが、それによって身を持ち崩す者も多いからだろうか。必ずしも成功がその人にとって幸福なこととは限らないとも言えるのだ。

その点、本作に登場する本物のミュージシャンはその中では例外的にしぶとく生き延びてきた人たちなのだろうか。フェイに対してアドバイスする役柄を演じたのはパティ・スミスで、亡くなった夫とのことをしみじみと語っていて、多分劇中の台詞というよりも自分の言葉で語っているようにも見えるのが印象的だった。

本作は夢破れた者たちの話なのだが、音楽を諦めて普通の生活を選ぶフェイとBVは決して敗残者には見えないし、夢の代わりに愛を選んだとでもいうような前向きなラストにも思えた。

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