『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 心残りを解消する最終章

外国映画

監督は『スパイダーマン:ホームカミング』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』と同様のジョン・ワッツ

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第27作。

物語

ピーターがスパイダーマンだという記憶を世界から消す為に、危険な呪文を唱えたドクター・ストレンジ。その結果、このユニバースに、ドック・オク、グリーン・ゴブリン、エレクトロ、サンドマン、リザードといった強敵たちを呼び寄せてしまう。マルチバースが現実のものとなってしまったのだ。
彼らがこのユニバースに同時に存在することだけでも既に危険な状況に。
ストレンジは、ピーター、MJ、ネッドに協力を求め、彼らを各々のユニバースに戻そうと試みるが、次々とスパイダーマンに襲い掛かるヴィラン達。その脅威は、恋人のMJ、親友のネッド、さらにはメイ叔母さんにまで。
最大の危機に晒された、ピーター。このユニバースを守り、愛する人達を守る為に、彼に突き付けられる<選択>とは――

(公式サイトより抜粋)

有名になることの代償

前作の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の最後で、敵のミステリオに正体をバラされてしまったスパイダーマン。無名の青年ピーター・パーカー(トム・ホランド)は世界一有名な人になってしまう。しかもミステリオはピーターを悪者に仕立て上げてしまったから、人助けに励んでいた善意の人ピーターを誤解する人も出てくることになる。

困ったのはその騒動に巻き込まれることになった周囲の人々。恋人のMJ(ゼンデイヤ)と親友ネッド(ジェイコブ・バタロン)は、ピーターと一緒にMITに進学しようと計画していたのに、評判が悪くなったスパイダーマン=ピーターとの関係性が問題視されたのか、MITへの入学を拒否されることになってしまう。

巻き込んでしまった人たちのためにも事態をどうにかしたいピーターは、ドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)に頼み込むことになる。時を戻すことはできないけれど、ピーターがスパイダーマンだという記憶を人々から消すことならできると、ストレンジは呪文を唱えることになるのだが、それがより大きなトラブルを引き寄せてしまうことに……。

(C)2021 CTMG. (C) & TM 2021 MARVEL. All Rights Reserved.

マルチバースの扉

こんなふうにしてマルチバースの扉が開くことになる。スパイダーマンを主人公とする映画はこれまでにサム・ライミ監督の『スパイダーマン』3作品と、マーク・ウェブ監督の『アメイジング・スパイダーマン』2作品がある。今回のMCU版スパイダーマンの「ホーム」シリーズは、過去の5作品とは関わりのないリブートという扱いだったはずだが、それらの世界が交わることになるのだ。

サム・ライミ版に登場していた敵ドック・オク、グリーン・ゴブリン、サンドマン。マーク・ウェブ版のエレクトロやリザード。それらの敵が一堂に介してスパイダーマンに襲い掛かる。5人もまとまってきたらさぞかし大変なことになるのかと思っていると、ストレンジに教わった術(?)で意外とあっさりと敵を捕獲することに成功することになるのだが……。

※ 以下、ネタバレもあり!

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ファンが望んでいたもの

マルチバースの扉が開いたとなると、気になるのは別世界のスパイダーマンも登場するのかということだろう。これに関しては前々から噂されていたことだったわけだけれど、本作のピーターを演じるトム・ホランドが3人の共演をインタビューで否定していたから、当然それはないものだと思っていた。

ところがトム・ホランドはそんなふうに言わされていた(?)だけだったようで、本作はファンの誰もが期待していたことを見せてくれるのだ。

ネッドがストレンジのリングを使って空間へ穴を開けると、そこには『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのアンドリュー・ガーフィールドがいる。そして次に出てくるのはサム・ライミ版『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイアなのだ。

三人の共演は三兄弟の再会みたいな趣きだ。長男のトビー・マグワイア、次男のアンドリュー・ガーフィールド、そして三男のトム・ホランド。次男のアンドリューが長男トビーの身体を気にしてストレッチを施したりするシーンは、妙に微笑ましいものに映る。初共演のはずなのに、ずっと昔から知っている仲みたいに見えるのだ。

それだけでもファンには堪らない瞬間ということになるわけだが、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、過去の『スパイダーマン』映画をきれいに終わらせる役割も担っている。サム・ライミ版『スパイダーマン』も、『アメイジング・スパイダーマン』もさらなる続編が企画されていたのに終了してしまったという経緯がある。本作はそれらの心残りの部分をスッキリさせてくれるのだ。

感動的だったのは『アメイジング・スパイダーマン2』において、エマ・ストーン演じるグウェンを守れなかった次男アンドリューが、三男トムの代わりにMJを救うところ。『アメイジング・スパイダーマン2』のラストのグウェンの死は衝撃的だったわけで、次男アンドリューは本作でMJを救うことで心残りを少しは解消することになっただろう。

そして長男トビーは、本作でグリーン・ゴブリン(ウィレム・デフォー)にメイおばさん(マリサ・トメイ)を殺されて怒りに我を忘れている三男トムに、復讐は虚しいだけだということを示すことになる。これはさらに重要な意味を持っているのかもしれない。というのは、そのことはスパイダーマンにおいて重要な台詞である「大いなる力には、大いなる責任が伴う」にも関わってくるからだ。この台詞は過去作ではベンおじさんの台詞だったが、今回はメイおばさんがピーターにこの言葉を授けることになる。

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「大いなる力」とは?

スパイダーマンと同様にグリーン・ゴブリンなどの敵たちも異能者であり「大いなる力」を持っている。しかしグリーン・ゴブリンは「大いなる力」をギフトだとし、それを手放そうとはせず、しかもそれを悪用しようとする。これはピーターが「大いなる力」で人助けに励む姿とは対照的だろう。

三男トムが復讐のために「大いなる力」を利用してグリーン・ゴブリンを殺したならば、それはグリーン・ゴブリンが「大いなる力」を悪用しているのと同じことになってしまう。長男トビーが三男トムを身を挺して止めたのは、そのことを理解していたからなのだろう。

そして、この「大いなる力」を持っているのはアメリカという国でもあるのだろう(最後の闘いが自由の女神から落下したキャプテン・アメリカの巨大な盾の上で行われたのも意味ありげだ)。「世界の警察官」を自認し、世界一の経済力と軍事力という「大いなる力」を有するアメリカ。しかしその力をどう使うかが問題で、それを自国の利益のために使うとするならば、アメリカはグリーン・ゴブリンと同じような存在になってしまう。「大いなる責任」とはそういう意味なのだろう。

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だから三男トムは敵たちを元の世界へ戻すだけではダメだと考える。それでは元の世界でスパイダーマンに殺されるという運命を変えることはできないから。だから治療が必要で、それによって敵たちも救済されることになる。これが三男トムの考えた責任ということになるのだろう。

多分に理想主義的な考えとも思えるのだが、これは観客に受け入れられているようだ。個人的にはストレンジがマヌケに見えたり、敵の態度があやふやにも思えたりと、色々とツッコミどころもある気がするのだけれど、本作は観た人の評価がすこぶる高いのだ。これもスパイダーマンの人気のなせるわざなのだろうし、これまでシリーズで三人が演じてきたピーター・パーカーの善性があればこそなのだろう。

本作でマーベル版のスパイダーマンは一応完結ということになるようだが、一方で新三部作の話も出てきたようだ。三男トムは最後に大人の決断をしたわけで、今後はさらに成長したピーターの姿が描かれることになるんだろうか?

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