『DUNE/デューン 砂の惑星』 覇権争いと超能力

外国映画

原作はフランク・ハーバートのSF小説。

監督は『メッセージ』『ブレードランナー2049』などのドゥニ・ヴィルヌーヴ

物語

アトレイデス家の後継者、ポール。彼には“未来が視える”能力があった。

宇宙帝国の皇帝からの命令で、その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われる、過酷な《砂の惑星デューン》へと移住するが、それは罠だった…。

そこで宇宙支配を狙う宿敵ハルコンネン家の壮絶な戦いが勃発!

父を殺され、巨大なサンドワームが襲い来るその惑星で、全宇宙のために立ち上がる――

(公式サイトより抜粋)

失敗作となったリンチ版

SFの世界では金字塔とされる小説の映画化。あまりに壮大な物語ゆえに映画化不可能などと言われた原作小説だが、すでに一度映画化されているのは周知の通り。1984年のデイヴィッド・リンチ版の『デューン/砂の惑星』だ。これはリンチには最終決定権がなく、リンチがつないだ4時間以上の長さのものを2時間以内に短縮したことから、意味不明なダイジェスト版となってしまったということだったらしい。

私もリンチ版はかつてテレビで放映した時に観ているのだが、ハルコネン男爵の気味悪さが残っただけで、まったく意味がわからずという感じだった。その後、今回のヴィルヌーヴ版が製作されることを知り、動画配信サイトで改めてリンチ版を観てみたのだけれど、それでも物語は全然頭に入ってこなかった。

冒頭で皇帝の使いがやってくる場面の異様な雰囲気とかは観るべきものがある気もしたし、カイル・マクラクランの妙な掛け声は印象に残ったとはいえ、原作を読んでない者としてはなぜ『DUNE』だけが特別視されるのかはよくわからなかった。

壮大な序章

そして、今回のドゥニ・ヴィルヌーヴ『DUNE/デューン 砂の惑星』は、全二部作の前編とされている。リンチ版のようにダイジェスト版になってしまって意味不明になるのを避けるために、ヴィルヌーブは二部作になることは譲らなかったようだ。そのおかげで本作はゆっくりとした展開で壮大な物語を描けることになった。

ある意味では序章に過ぎないし、これからという時に終わってしまうとも言えるわけだけれど、個人的にはリンチ版のように何が起きているのかよくわからずに迷子になるということはなかったと思うし、原作小説を多くの人が褒めるわけがちょっとはわかったような気にもなった。

要はアトレイデス家とハルコンネン家の対立があって、そこに宇宙帝国の皇帝がハルコンネン家に味方してアトレイデス家をハメたらしい。主人公のポール(ティモシー・シャラメ)は父親(オスカー・アイザック)を殺されたものの、デューンに住む先住民族であるフレメンの力を借り、ハルコンネン家と闘うことになるということらしい。

その反撃前に終わってしまうわけで、やはり序章という感は否めないわけだが、ここまでで155分だ。それだけの時間をかけて砂の惑星という独自の世界を見せるスペクタクルはさすがに迫力があったと思うし、トンボ型の飛行機は映えるものがあった。ハンス・ジマーの音楽というか音響効果というべきかよくわからない劇伴も心地よく、劇場で観るべき超大作としてなかなか楽しめたというところだろうか。後編の終わり方も観ないと何とも評価できないけれど……。

(C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

覇権争いと超能力

『DUNE』の世界では砂の惑星で採れるメランジと言われるスパイスが重要視されている。これは効果としては抗老化作用があり、また意識を拡張するのだとか。これを制するものが宇宙を制するとされているわけだが、これは原作が書かれた当時の現実世界で言えば石油ということになるのだろう。

そして、先住民フレメンたちの格好を見ていると、それはアラブの人たちに見えるわけで、現実世界で石油を制するものが世界を制するということを示しているのだろう。そんな現実世界を反映した覇権争いの軸と、その一方で本作は非現実的な“ヴォイス”という超能力めいた力が出てくる。

陰謀渦巻く宇宙を股に掛けた覇権争いと、修行による超能力の覚醒。これだけで何となく男の子が好きな話という感じは理解できるような気がする(もちろんそれだけではないんだとは思うけれど)。

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『DUNE』の影響力

ジョージ・ルーカスはそんな話にはまったひとりだということで、『スター・ウォーズ』においてかなり『DUNE』からいただいたものを使っているとされる。そもそも先ほど書いた「陰謀渦巻く宇宙を股に掛けた覇権争いと、修行による超能力の覚醒」という要約は、そのまま『スター・ウォーズ』に当てはまる。

『DUNE/デューン 砂の惑星』の帝国軍勢揃いの風景は『スター・ウォーズ』シリーズのそれとよく似ているのだが、もともとは『DUNE』にあったものをルーカスがいただいていたということになるのだろう。映画化されたのは『スター・ウォーズ』のほうが先だし、興行収入的にも圧倒的に『スター・ウォーズ』の勝ちだけに、『DUNE』のほうが真似のように見えてしまうけれど、本当は逆だったわけだ。

主人公ルークが育ったのが砂の惑星タトゥイーンとされていたり、『スター・ウォーズ』のジェダイの騎士がライトセーバーという剣で闘うことすら『DUNE』の影響なのかとも思えてきた。とにかくそれだけ面白い要素が『DUNE』の原作には詰まっているということだったのだろう。

砂の中に住むサンドワームと呼ばれる怪物は、『風の谷のナウシカ』の王蟲になったとも言われているようだし、『DUNE』の持つ影響の波及力はとんでもないわけで、一度は原作も読んでみたくなった。

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夢は深淵からのメッセージ

男たちが覇権争いに明け暮れるなか、ポールの母親たちのグループ(ベネ・ゲセリットというらしい)はよくわからないことをやっている。宗教的な雰囲気の彼女たちは“クイサッツ・ハデラッハ”という救世主を生み出そうとしているらしい(聞きなれない用語が多いのはちょっと困る)。そして、それはポールであり、ポールが覇権争いにも影響を与えることになるということなんだと思うのだがどうなんだろうか?

“ヴォイス”と呼ばれる能力もポールがベネ・ゲセリットである母親(レベッカ・ファーガソン)から受け継いだものだ。これは声の調子を変えることで他人を自由に操るものらしい。劇中、通常の声とは違う“ヴォイス”の効果は、エコーのような音響効果で示されていて、これがなかなかカッコよかった。

本作の開巻劈頭では製作会社のロゴなどをすっ飛ばしていきなり“ヴォイス”が響き渡る。「夢は深淵からのメッセージだ」という言葉がそれだ。突然の“ヴォイス”の効果でドキリとさせられるのだ。声の響きというのは心の奥底に訴えるものがあるのかも。なかなかインパクトがあってシャレた始まり方だった。

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