『ほんとうのピノッキオ』 キャラクターを愛でる作品

外国映画

原作はカルロ・コッローディの童話『ピノッキオの冒険』

監督・脚本は『ゴモラ』『ドッグマン』などのマッテオ・ガローネ

原題は「Pinocchio」。

物語

貧しい木工職人のジェペット爺さん(ロベルト・ベニーニ)が丸太から作った人形が、命を吹き込まれたようにしゃべり始めた。ピノッキオ(フェデリコ・エラピ)と名付けられたやんちゃな人形は、ジェペットのもとを飛び出して、森の奥深くへと誘われる。道中、ターコイズ・ブルーの髪を持つ心優しき妖精の言いつけにも、おしゃべりコオロギの忠告にも耳を貸さない。なおも命からがらの冒険を繰り広げるピノッキオは、はたして「人間の子どもになりたい」という願いを叶えられるのだろうか……。

誰もが知っているピノキオ

ピノキオの物語は誰でも知っている。私自身もディズニー版のアニメ『ピノキオ』を観たのか、日本のテレビアニメの『樫の木モック』を観たのかすら覚えていないけれどもなぜか知っている。当然ながら細かい部分は忘れているけれど、「嘘をつくと鼻が伸びる」とか、印象的な部分は記憶に残っている。

大人になってから、旧約聖書の中にクジラに飲み込まれてその中で人が暮らしているというエピソードがあることを知った時も、どこかで聞いた話だと感じたのは、ピノキオに同様のエピソードがあったからだろう。原作は読んでいなくても、知らず知らずのうちに慣れ親しんでいたのがピノキオの物語なのだ。

『ほんとうのピノッキオ』は原作にかなり忠実に映画化されているとのこと。予告編では“ダークファンタジー”と謳っているけれど、物語としてはそれほどダークな感じは強くない。『本当は恐ろしいグリム童話』的な路線を狙ったものなのかもしれないが、キャッチコピーとはちょっとズレているかもしれない。

マッテオ・ガローネ監督は『五日物語 -3つの王国と3人の女-』で既にグロテスクなおとぎ話をやっているけれど、『ほんとうのピノッキオ』は物語としては子供が見ても教訓的な話と受け取れる内容になっている。一方でキャラクターの造形は子供たちにはちょっと不気味かもしれない。木でできた人形であるピノッキオもCGではなく、特殊メイクで木材のリアルな木目を再現している。それが動き出すわけだからちょっと不気味にも見えるのだ。しかしながら同時にかわいらしくもあるという微妙なところを突いてくるのだ。

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悪ガキのピノッキオ

本作のピノッキオ(フェデリコ・エラピ)はなかなかの悪ガキだ。ジェペット爺さん(ロベルト・ベニーニ)の言いつけを守ろうともしない。親切なコオロギに助言されても「人に従うのは好きじゃない」と、コオロギにハンマーを投げつけて撃退する始末なのだ。もっとも子供というものは最初はそんなものなのかもしれない。それが親や周囲の教えによってしつけられていくものなのだろう。

本作のピノッキオも最初は自分勝手にやりたいことばかりして、失敗を繰り返している。学校へ行って勉強するはずが、近くで人形劇をやっているとそちらが観たくなってしまい、ジェペット爺さんが買ってくれた大事な教科書を売ってしまったりする。

また、世間の厳しさを知ることもない甘ちゃんでもあるピノッキオは、何度も美味しい話に乗せられ酷い目に遭う。遊んで暮らせる国に行こうという甘言に乗せられ、ロバに変身させられ売り飛ばされてみたり、金貨を増やしてあげると騙され、まんまとそれをネコババされてしまったりもする。

ただ、それでもそんな悪ガキのピノッキオを優しく導いてくれる人もいる。常に真っ当な助言を与えてくれるコオロギだったり、窮地に陥ったピノッキオを助けてくれる青い髪の妖精(幼少期:アリーダ・バルダリ・カラブリアマリーヌ・ヴァクト)がいるからだ。そんな多くの周囲の人(?)の助けを借りてピノッキオは成長し、最後は人間の男の子になることができるのだ。

「アリとキリギリス」の話ではないけれど、遊びほうけていては真っ当な大人になれないということを示す教訓的な話となっているわけだ。だからあまり怖いことはないし、ダークな感じもしない。至極真っ当で子供にとってためになる作品と言えるかもしれない。キャラクターのデザインが子供にウケるのかはよくわからないけれど……。

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不気味だけれどちょっとかわいい

『ほんとうのピノッキオ』の世界は不思議な世界だ。ピノッキオが木でできた人形であっても周囲はそれをあまり不思議とは捉えておらず、学校でも同級生たちは彼と普通に接している。人形劇団の人形たちとピノッキオとの違いは、ピノッキオには操り糸がないことだけで、それ以外は人形が普通にしゃべっていても驚かないらしい。

そして、脇役のキャラはみんな動物なのだが、それを演じているのは人間だ。真っ当な助言をしているのにピノッキオからは肘鉄を喰らわされてばかりのコオロギは、コオロギと言いつつもビジュアル的には小さなおじさんだ。それでも妙にかわいらしい声をしていて、不気味だけれどちょっとかわいい。本作はそんなキャラクターを愛でる作品なのだろう。

詐欺師の二人組はキツネとネコで、妖精の従者はカタツムリだ。なぜか裁判長はゴリラで、この裁判所では無罪の人が牢屋に入れられることになっている。そのためにピノッキオはやってもいない罪を並べ挙げてようやく釈放されるという奇妙な世界なのだ。本作の見どころはそんな奇妙なキャラクターたちのデザインと言えるかもしれない。本作はアカデミー賞でも「衣装デザイン賞」と「メイクアップ&ヘアスタイリング賞」にノミネートされるほどよくできている。

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ピノキオの原作はイタリア人のカルロ・コッローディが書いたもので、イタリア人にとってはより一層身近な物語なのかもしれない。監督のマッテオ・ガローネは6歳の時にピノキオのストーリーボードを書いていたのだとか。

本作はイタリアではかなりの興行収入を上げたようだ。本作でジェペット爺さんを演じているロベルト・ベニーニも、2002年に自ら監督・主演でピノキオの映画を製作してもいるらしい。この作品もイタリア国内では最高の興行収入を記録しているとのことで、ピノキオの物語はイタリア国民にとっては馴染みがあり人気もある作品ということのようだ。

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