『恋するプリテンダー』 オフビートか? 失敗か?

外国映画

監督は『ANNIE アニー』などのウィル・グラック

主演は『リアリティ』などのシドニー・スウィーニーと、『トップガン マーヴェリック』などのグレン・パウエル

原題は「Anyone But You」。

物語

弁護士を目指してロースクールに通うビー(シドニー・スウィーニー)は、街角のカフェで出会った金融マンのベン(グレン・パウエル)と最高の初デートをするが、ちょっとした行き違いによって燃え上がったはずの恋心が一気に凍りついてしまう。数年後、そんな2人はオーストラリアで同じ結婚式に出席することになり最悪にも再会!真夏のリゾートウェディングに皆が心躍らせる中、周囲も気を遣うほどの険悪ムードな2人だったが、復縁を迫る元カレから逃げたいビーと元カノの気を引いてヨリを戻したいベンは、お互いの望みを叶えるために恋人のフリをするというまさかのフェイク・カップル契約を結ぶ。果たしてウソつきな2人は、最高のカップルを演じきることができるのか…⁉ オトナ男女の意地とプライドを懸けた“××きゅん”ラブゲームの火蓋が切って落とされる!

(公式サイトより抜粋)

ラブコメ復活?

公式サイトには「王道のラブコメが帰ってきた」みたいなことが書かれている。アメリカでは2億ドル(日本円にすると300億円以上)を超える大ヒットだったのだとか。「社会現象化」などとかなり大袈裟なことが書かれているのをどこまで信じていいのかわからないけれど、大ヒットしたことは確からしい。

私にはどこにそのヒットの要因があるのかがわからないのだけれど、アメリカでは主演の二人が余程の人気者ということなのだろうか? 筋肉ムキムキのグレン・パウエルのことは『トップガン マーヴェリック』で顔を覚えていたけれど、シドニー・スウィーニーは初めて見る役者さんだと思っていた。ところが調べてみると『リアリティ』の主演だった女性らしい。

『リアリティ』はシリアス路線で、政治的な問題に関わる作品でもあるからか笑顔などは見せていなかったこともあり、本作のイメージとはまったく異なる別人という印象だったのだ。

『恋するプリテンダー』のシドニー・スウィーニーは、ラブコメ用なのか最初から笑顔を振り撒いていて親しみの持てる雰囲気を醸し出している。しかもドレスや水着なんかになったりすると、ゴージャスな感じがするのはセクシーでもあるからだろうか(劇中の言葉を借りれば“巨乳”ということになる)。

シドニー・スウィーニーは去年発表されたローリング・ストーンズの「アングリー」という曲のミュージックビデオにも出ていた女性らしい。知らず知らずのうちにすでに見ていたわけだけれど、いかにもセクシーという役柄もとても似合う女性なのだ。

とは言うものも、彼女は本作の製作総指揮にも名前が挙がっているところからすると、演じる役柄も場合によってコントロールしているということなのかもしれない。そんな意味では、賢い人でもあるし、演技派とも言えるのかもしれない。

© 2024 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

スポンサーリンク

 

恋するフリをした結果

本作はシェイクスピアの喜劇『空騒ぎ』から影響を受けた作品ということらしい。周囲の策略で男女がくっつけられそうになるという部分が『空騒ぎ』から借りてきた部分だろうか。

主人公のビー(シドニー・スウィーニー)は、カフェで緊急事態のところをベン(グレン・パウエル)に助けられることになる。二人はたちまちいい感じの関係になるのだが、ちょっとした失言と勘違いによってそれはダメになってしまう。ところが二人はそれぞれの大事な人の結婚式で再会することになる。ただ、仲違いしている二人はトラブルの元になり、結婚式の成行きを心配した周囲は、二人をくっつけようと策略を練ることになる。

それだけならば二人がその策略に乗っかる必要はなかったのだけれど、別の事情からあえて周囲の策略に乗っかることになる。ビーは両親から元カレとの復活を乞われていて、それを阻止したいという思惑があり、一方でベンは昔の彼女のことが気になり、彼女の嫉妬を駆り立てたいと思っていたからだ。そんなわけで二人は恋人になった「フリをする」ことになる。

邦題の“プリテンダー”というのは、Official髭男dismのヒット曲のタイトルに引っかけているということなのだろうか。pretendという動詞には「フリをする」という意味があるからということだろう。「嘘から出たまこと」というのはよくあることで、険悪だった二人が恋をしているフリをするつもりがいつの間にか本当にそうなってしまうという、王道のラブコメスタイルの作品なのだ。

© 2024 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

オフビートか? 失敗か?

監督のウィル・グラック『ピーターラビット』シリーズがとてもおもしろかったのだけれど、なかなかキワドイところを攻めるきらいがあって、そこで好きか嫌いかが分かれるのかもしれない。たとえば『ピーターラビット』では、ピーターがある人物をアナフィラキシーショックで殺しかけたりする。ちょっとやりすぎてしまうところがあるのだ。ピーターがかわいいからギリギリ許されているけれど、やっていることがえげつないのだ。

本作はラブコメだが、コメディの部分ではやりすぎているように感じられる部分もあった(ビーの両親も、ビーから「やりすぎる」とたしなめられている)。ビーとベンは周囲に恋人であるフリをしなければならないわけで、みんなの前でスキンシップを図る必要がある。そのために双方がパンツの中まで手を突っ込んでみたりするのは、ちょっとおかしいのは確かだけれど結構品がないのだ。

下ネタは決して嫌いではないけれど、意外なところで飛び道具に出くわしたみたいな印象でちょっと戸惑ってしまった。ベンとベン以上の脳筋男とのやり取りでは、なぜか最後は脳筋男の股間のアップで終わるのだが、日本版ではボカされていたものの、オリジナルではどうだったのだろうかと、妙なところが気になってしまった。股間が大写しになってオチって……。

それからウィル・グラックの過去の作品から比べると、どうにもテンポが悪い気がした。印象論でしかないけれど、過去の作品では『ピーターラビット』シリーズもそうだし、ラブコメである『ステイ・フレンズ』『小悪魔はなぜモテる?!』など(※)でも登場人物のテンポのいいやり取りが効いていた気がするけれど、本作はどうもそれを外しているような感覚がある。

※『ステイ・フレンズ』の原題は「メリットのある友達」というもので、ビーとベンの関係とも似ている。『小悪魔はなぜモテる?!』はエマ・ストーンの出世作だ。

もしかすると本作ではオフビートな感覚を狙っていたのだろうか? オフビートという言葉の正確な意味もよくわからないままこれを書いているわけだけれど、たとえばビーとベンの尻のまさぐり合いは、結局誰も注目しておらず、コアラが出てきてすべてをさらっていってしまうことになる。テンポのいいやり取りではなく、それを外したところでオチを狙っていたのかもしれないけれど、全般的にそれが今ひとつハマっていないような気もしたのだ。

そんなわけで本作がなぜアメリカで大ヒットを記録したのかは最後までわからないままだったけれど、ラストは安心のハッピーエンドが待っているわけでそれなりに楽しめる作品と言えるだろうし、とにかく主演二人のナイスバディはインパクトありだった。

コメント

タイトルとURLをコピーしました