『見えない目撃者』 大胆なリメイク

日本映画

監督は『リトル・フォレスト』などの森淳一

韓国映画『ブラインド』アン・サンフン監督)のリメイクとのこと。

物語

警察学校を卒業しこれからという時、交通事故に遭い失明してしまった浜中なつめ(吉岡里帆)は、その事故で弟を殺してしまったことを後悔する日々を送っていた。

ある夜、なつめは盲導犬のパルと一緒に家に向かう途中、交通事故らしき物音を耳にする。なつめはそこで車のなかから助けを呼ぶ女性の声を聞き、誘拐事件と判断するのだが……。

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目が見えないのに目撃者とは?

「見えない目撃者」という言葉自体がほとんど語義矛盾とも言える。事件をその目で確認したからこそ目撃者と言えるわけで、目の見えないなつめが目撃者となれるのだろうか?

劇中でも警察は事件を見ることのできないなつめの証言を取り合おうとはしない。しかも、なつめは弟を亡くしたトラウマのため精神科に通っているということもあり、そのこともバイアスとなってなつめの証言は勘違いとして処理されてしまうことに。

視覚を補う能力

盲目の人が世界をどのように把握しているのかを理解することは難しいが、普通の人は8割から9割くらいを視覚からの情報に頼っているとも言われる。盲目の人は視覚からの情報がない分、そのほかの情報で世界を把握するわけで、声によって大体の年齢まで把握する程度には感覚が研ぎ澄まされていくらしい。

なつめも警察内でのちょっとした会話だけで、相手の「年齢」と「背の高さ」に加え「昼ご飯に何を食べたか」まで的中させるくらいの能力はあるのだ。

そして、この事件にはもう一人の目撃者がいる。最初に交通事故に遭遇したスケボー青年・春馬(高杉真宙)がもう一人の目撃者で、なつめは彼を探して一緒に事件を解決しようと奔走することになる。

※ 以下、ネタバレもあり!

(C)2019「見えない目撃者」フィルムパートナーズ (C)MoonWatcher and N.E.W.

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大胆なリメイク

本作のプロデューサーは22年目の告白-私が殺人犯です-』(韓国映画『殺人の告白』のリメイク)を製作した人のようで、本作も同じく韓国映画『ブラインド』のリメイクとなっている。しかも『ブラインド』はすでに中国で『見えない目撃者』(2015年)というタイトルでリメイクされているらしい。それだけ目の見えない人が目撃者になるというアイディアが秀逸だったということだろう。

『見えない目撃者』(2019年)は連続殺人事件が題材となっていて結構グロいシーンがある。これは韓国映画のリメイクだからなのかと思っていたのだが、『ブラインド』を確認してみると本作の異様な殺人事件は日本版独自の設定のようだ。『ブラインド』では犯人は場当たり的に犯行を繰り返しているだけだが、本作の犯人はターゲットを絞っているし途中で発見された4人の遺体には一部の損壊があることが判明する。それぞれ鼻、口、手、耳をそぎ落とされていたのだ。

この異常な犯罪は何に由来するのかと言えば、仏教や神道の「六根清浄」の考え方による。「視覚」、「聴覚」、「嗅覚」、「味覚」、「触覚」の五感と「意識」とを合わせて「六根」と呼び、それらを清らかにすることで迷妄を断つことができるというものだ。犯人がそれに忠実に犯行を行っているとすれば、あとふたりの犠牲者が出ることになる。

オリジナルにはないこの設定によって、予想されるあとふたりの被害者を助けるという目的が生まれ、なつめたちが余計に事件に首を突っ込まざるを得ない状況ができあがる。しかも儀式的殺人は『セブン』における「七つの大罪」のような役割を果たし、異様な雰囲気を醸し出すことにもなっている。

それから被害者となった女子高生たちの身元がバレなかったのは、彼女たちが家出少女だったから。親が子供たちに無関心で、家出していても警察に届けなどを出していなかったというわけだ。親の子供に対するネグレクトは最近あちこちで話題になっていることでもあり、日本版のリメイクとして独自色を出しているのだ。

暗闇での闘い

オリジナルの韓国映画を大胆にアレンジしている点は好感が持てるのだが、肝心の目の見えないなつめと犯人との対決の部分では、日本版のなつめはあまりに積極的に行動し過ぎていてちょっと絵空事になっていたようにも思う。この点ではオリジナルのほうが暗闇での闘いをうまく描いていたように感じられた。

『ブラインド』でも主人公は犯人に命を狙われるわけだが、最後の舞台は主人公が幼い頃に住んでいた場所だった。それに対して本作では犯人の屋敷に乗り込んでいき、人質となっている女子高生を助けようとする。しかもケガをした春馬を逃げさせておいて、ひとりで犯人と対決するのだ。

春馬や誘拐された女子高生が亡くなった弟と重ね合わせられているのは明らかだし、犯人との対決でトラウマから解放されるという結末も悪くないのだけれど、強引なところが目立った。先行作品である『暗くなるまで待って』のように、目の見えない主人公が秘密を握っていて簡単には殺せないなどの設定がなければサスペンスは維持できないんじゃないかとも感じられた。

そのあたりを無視すれば楽しめる作品にはなっていて、人のいい刑事(大倉孝二)のやられ方なんておもしろかったのだけれど……。最後に傷つけられたパルが登場したときにはホッとした。オリジナルの韓国映画では主人公を守るために盲導犬が犠牲になるのだが、あまりにかわいそうだったから。

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