『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』 老骨に鞭打っての追いかけっこ

外国映画

監督は『LOGAN ローガン』『フォードvsフェラーリ』などのジェームズ・マンゴールド

『インディ・ジョーンズ』シリーズの第5作にして完結編。

物語

考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズの前にヘレナという女性が現れ、インディが若き日に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」の話を持ち掛ける。それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その「運命のダイヤル」を巡ってインディは、因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラーを相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることとなる。

(「映画.com」より抜粋)

40年越しのシリーズ完結編

第1作の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』が公開されたのが1981年だというから、あれから40年以上が経過している。主人公のインディアナ・ジョーンズを演じるハリソン・フォードはデビューが遅かったようで、『アメリカン・グラフィティ』でデビューした時にはすでに30歳を越えていて、『レイダース』の時は30代後半だったようだ。それから40年以上経つわけだから、当然ハリソンだって歳を取るわけだ。

本作の冒頭では、CG技術で作られた若いインディ=ハリソンが登場し、ナチス相手に走る列車の上を飛び回るアクションを披露する。しかしビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」で叩き起こされる1969年のインディは、さすがに年老いている。

この場面はハリソンが半裸で登場し、その年月を示すことになる。とはいえ、撮影当時79歳だったというのに、まだまだ元気な姿を見せてくれることにはなるわけだが、「身体中痛いところばかり」と愚痴を言っていたりもするわけで、やはり往年の力はなくなっているとも言える。

しかも前作でようやく結婚したマリオンとは、なぜか離婚が決まったらしい。この要因は息子の死にあるようだ。父親への反抗からベトナム戦争に従軍した息子は帰らぬ人となり、そのことでマリオンとの関係も壊れてしまったのだ。インディは老境に達した今になって人生の危機を迎えているのだ。

(C)2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.

追いかけっこの連続

『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の“マクガフィン(動機付けのアイテム)”は、「運命のダイヤル」と呼ばれるものだ。これは冒頭の戦いでインディがたまたまゲットしたものだが、それがインディの親友バジル(トビー・ジョーンズ)の人生を狂わすことになったらしい。そして、そのバジルの娘ヘレナ(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)がやってきてそれを奪っていくことになる。そんなふうにしてインディは今回の宝物探しに巻き込まれる。

そこから先もアクションの連発になっている。冒頭の若き頃のインディの列車での追いかけっこ。それからパレードの騒ぎの中での馬とバイクの追いかけっこ。さらに三輪バイクでの追いかけっこ。場所を変え、乗り物を変えて、そんなふうに追いかけっこを連発するのだが、スピルバーグにあったユーモアに欠けるからかちょっと単調とも感じられた。

そんなスピルバーグも、第2作『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』では、アクションのつるべ打ちをやり過ぎたと感じていたようで、それを反省してもいた。次の第3作『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』の時には、アクションの合間にインディとその父親ヘンリーの息のあった掛け合い漫才を挟んで和ませていた。

そんなわけで本作ももっと緩急があったほうが良かったとは思うけれど、ラストは意外な展開で楽しませてくれた。それを考えると、前作『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』は必要な作品だったのかもしれないとも思えてきた。前作のアレがなければ、本作のオチもなかったかもしれないからだ。

前作の最後にはなぜか宇宙人(?)が登場した。これは賛否両論というか、概ね不評だったんじゃないかと思うのだが、このアイディアはシリーズの原案を出しているルーカスが出してきたものだったらしい。そもそもルーカスとしてはこのシリーズで何でもありのB級テイストを狙っていたようでもあるのだ。それを考えると、このシリーズではラストで様々な超常現象が起きていたりもするわけで、本作の最後もそれほど意外でもなかったのかもしれない。

※ 以下、ネタバレもあり!

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“男のロマン”は?

「運命のダイヤル」は、時の裂け目の位置を測るものという設定。それを作ったのはアルキメデスとされている。それによって何が起きるかと言えば、いわゆるタイムトラベルが可能となるのだ。

「運命のダイヤル」を狙っていたフォラー(マッツ・ミケルセン)は、それを利用して歴史を変えようとする。ドイツが負けた現実を変えようとするわけだ。フォラーが戻ろうとしていたのは第二次世界大戦中のどこかだったわけだけれど、時の裂け目を抜けてたどり着いたところは紀元前200年頃のある戦い(シュラクサイ包囲戦)の現場だったのだ。

インディは自分がどうにかして証明したいと思っていた古代世界の出来事をその目で目撃する。そして、そこにはアルキメデス本人がいて、まさに目の前でアルキメデスの鉤爪で沈没させられる船のスペクタクルを体験することになるのだ。

これは古代世界に憧れて考古学者をやっていたインディにとってはたまらない世界ということになるわけで、インディはそのままその時代に留まることを望むのだ。というよりも、何としてでも現代に戻ろうとするような“つながり”を失ってしまったということが大きかったのかもしれないのだけれど……。

そもそもインディは金のためにトレジャーハンティングをしているわけではなかった。彼を駆り立てていたものは“男のロマン”みたいなものなのだろう。『古代への情熱 』のシュリーマンが、それまで伝説とされていた都市トロイアを発掘したような、そんな古代に対する情熱がインディにもあったということなのだろう。

インディは彼が証明したいと思っていた出来事を目の当たりにしたわけで、自分自身にとってはこれ以上の証明はないわけだ。これは考古学者としてはとんでもないご褒美だったのだろう。だからこそインディは古代世界に残ることを頑迷に主張することになる。

監督のジェームズ・マンゴールドの作品には『フォードvsフェラーリ』のように“男のロマン”を感じさせるものが多いようだ。『フォードvsフェラーリ』では無茶をする男たちを見守る女性がいたわけだが、本作では頑固ジジイのインディをヘレナがノックアウトしていさめることになる。

とは言うものの、ヘレナのキャラクターは「運命のダイヤル」を売り飛ばそうとしてみたり、インディに協力してみたりと、やってることが何だかよくわからないのだけれど……。

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変わらないハリソン

シリーズとしては第1作と第3作に登場したサラー(ジョン・リス=デイヴィス)や、第1作と第4作に登場しインディと結婚まですることになったマリオン(カレン・アレン)も再登場し、大団円で幕を閉じることになる。

一方で敵役のフォラーとして登場したマッツ・ミケルセンは意外と間が抜けていて、敵役としてのインパクトはあまりなかった気もする。それからインディの親友として顔を出すアントニオ・バンデラスは、呆気なく退場することになり、この使い方はもったいなかった。バンデラスは『デスペラード』で最初に知った時はセクシーでいかにも男っぽいイメージだったけれど、それからだいぶイメチェンしているようでもある。

そこからするとハリソン・フォードは出てきた時からほとんど今のままで、あまり変わらない気もする。これはまたすごいことかもしれない。だからだろうか、わざわざ若い頃のハリソンをCGで作り上げたものの、印象としてはほとんど変わらないわけでCGのインパクトはあまりなかったわけだけれど……。

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