『コンティニュー』 馬鹿と鋏は使いよう?

外国映画

監督・脚本は『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』などのジョー・カーナハン

原題は「Boss Level」。

物語

朝目覚めた瞬間から謎の殺し屋に襲われ殺される元デルタフォース特殊部隊員のロイ。

銃で撃たれることもあれば、爆弾で吹き飛ばされることもある。首を切られることもあれば、刃物で刺されることもある。ところが何度殺されても生き返り、同じ1日を繰り返している。

死のループから抜けだすために何度もトライ&エラーを重ねる中、科学者である元妻からタイムループの鍵を握る極秘計画「コードネーム”オシリス“」の手掛かりをつかむ。ロイは真実を暴くため、追われる身となった元妻(ナオミ・ワッツ)を救うため、今度は自ら殺し屋集団の元に出向き追い詰め、計画の責任者である軍属科学者ヴェンター大佐(メル・ギブソン)の居場所を突き止めていく。

果たして、タイムループを抜け出し、明日にたどり着くことはできるのか―

(公式サイトより引用)

ループとゲーム

朝から殺し屋に襲われることになるロイ(フランク・グリロ)は、それがなぜだかわからない。それでもすでに140回以上も同じ朝を迎えているわけで、どうすれば生き延びることができるのかはわかっている。

寝起きのまま殺し屋の刀を避け、ヘリコプターからのガトリング銃の銃弾をかいくぐり、小麦粉を積んだトラックにダイブする。そうしたルートはロイが何度もチャレンジしてようやく確立したルートらしい。それでもまだロイが何のために襲われるのかは謎だし、ある時間を超えて生き延びることができずに停滞状態にある。

本作は“ループもの”の一種だが、特にゲームの要素がふんだんに取り入れられている。タイトル「コンティニュー」からしてそれは明らかだし、劇中では「ギャラガ」とか「ストリートファイター」などのレトロなゲームをするシーンもある。“ループもの”というのは同じ場面を何度も繰り返すもので、それがゲームと似ているからか、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のようなゲームを意識した作品も多い。

ゲームのプレイヤーは一度だけでそのゲームをクリアするわけではない。何度も繰り返しチャレンジして次第にスキルアップすることでゴールに辿り着く。『コンティニュー』のロイも何度も停滞期に阻まれながらも、不屈の精神で立ち上がりゴールをめざすことになる。

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やり直したのは?

ロイが本作の中でやり直しを迫られるのは、ゲームのような殺し屋との闘いを制することでもあるけれど、その一方で家族との関係でもある。本作のループのきっかけは、ループが始まる前日に元妻のジェマ(ナオミ・ワッツ)と会ったことだ。実はジェマは科学者で極秘でタイムループをする装置を開発していたのだ。

ロイはそのジェマとの関係もダメにしてしまい、息子には自分が本当の父親とは言えず、“叔父さん”として見守る立場にある。ロイはループの中でそんな家族との関係をやり直すことも模索することになる。

その意味で本作はロイの人生のやり直しのドラマとも言えるのだが、殺し屋とのやり取りの部分はなかなか軽快なアクションが展開するのに対し、家族との話になると途端にテンポが悪くなるところがあるのは否めないかもしれない。

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馬鹿と鋏は使いよう?

“ループもの”はどれもその設定からしてそれなりに楽しめるのだが、どれも過去の“ループもの”の二番煎じになってしまうところがある。本作もそれを免れてはいないわけだが、それでもループそのものが最強のアイテムのように機能しているところは新機軸だったのかもしれない。

“ループもの”の典型としては『恋はデジャ・ブ』が筆頭に挙げられるが、これはループに閉じ込められた主人公がなんとかしてそこから脱出しようと望むものだった。もちろん“ループもの”はそれだけではないわけで逆のパターンもある。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』などは、ある時間の中に留まりたいという願望を描いたものだった。ちょっと前からアマゾンプライムでひっそりと公開されている『明日への地図を探して』は、その両方の立場をうまくミックスしていた“ループもの”だと言えるかもしれない。

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しかしループから抜け出したいと考える側も、ループの中に留まりたいと考える側も、ループをうまく利用しようとまではしてこなかったんじゃないだろうか。本作でロイを殺すために多様な殺し屋を雇い、ヘリコプターまで用意してロイを排除しようとするヴェンター大佐(メル・ギブソン)は、何をそこまで躍起になっているのかと言えば、ループを利用して「世界を創り直す」ことを企んでいるからだ。

ロイがループの中に閉じ込められ次第にその世界の攻略法を学んでいくように、ヴェンダー大佐はループの中に閉じ込められることで、勝てそうにない戦争すら勝ちに導いてしまうことができるようになると考えているのだ。何度も失敗を繰り返しつつも、再び生き返ってそれを改善していくことができれば、どんな戦争だって最後には勝つことができる。それによってヴェンダー大佐は自分に都合のいいように「世界を創り直す」ことを狙っているわけだ。

悪い奴らというのはそんなことまで利用しようとするわけで、頭がキレるところがある。もっと真っ当な利用の仕方を考えていたとしたら、開発者であるジェマに反旗を翻されることもなかったのかもしれないけれど……。

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主人公を演じたフランク・グリロは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』などにも脇役として出ていた人らしい。バキバキの肉体の持ち主で、華に欠ける部分はあるのかもしれないが渋い魅力を見せている。ネームバリューのあるメル・ギブソンは大物感を出して登場するものの呆気なく退場するのは肩透かしだったけれど、『ポリス・ストーリー3』でジャッキーと一緒に素晴らしいアクションを披露していたミショル・ヨーが顔を出したりもする。一番の強敵は観音という剣術士なのだが、公式サイトにも名前が出ていないのはなぜなんだろうか。

様々な問題行動で一時干されかけていたメル・ギブソンが本作に対して、「物事はやり直せるということ、そして犯した間違いは正せるという教訓が含まれているんだ。」などと真っ当なコメントしているのはちょっとおもしろい。

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