『何がなんでも! 遺産でリッチ』 チェッカーロ会とは?

外国映画

監督はジョバンニ・ボニェッティ

Netflixオリジナル作品として6月4日から配信中。

原題は「Ricchi a tutti i costi」で、「何があっても金持ち」といった意味らしい。

物語

祖母が恋に落ちた相手は、信用ならぬ年下の男。彼の意図をいぶかしく思う家族は、彼女の命と遺産を守るべく密かに計画を練る。

(公式サイトより抜粋)

遺産を巡るコメディ

イタリアらしい家族の話で、主人公は4人の家族と言える。一家の大黒柱とも言えるのは母親のアンナ(アンジェラ・フィノチアーノ)で、旦那のカルロ(クリスチャン・デ・シーカ)は奥様の尻に敷かれているという状況。長男のエミリオ(クラウディオ・コリカ)は職探し中で未だに独立せずに実家暮らし。妹のアーレ(ダルマ・マンジャ・ウッズ)は独立はしたものの、経営している喫茶店がうまくいってないらしい。

そんなある日、アンナは同窓会でかつての恋人ヌンツィオ(アントニーノ・ブルスケッタ)と再会する。ヌンツィオは南米あたりで演劇をやっていたとかで、新しい劇をやるために主演女優を探している。アンナの母親ジュリアナ(フィロレッタ・マリ)はかつて女優をしていて、ヌンツィオはそれに目を付けたのだ。

ジュリアナは久しぶりに復帰した女優の仕事に大喜びだ。ヘミングウェイの翻案物『老女と海』の主演になり、ヌンツィオはカジキマグロ役で、老女とカジキの対話が展開されるというトンデモない演目でも女優に復帰できたのが嬉しいのだ。

ところがヌンツィオの目的は演劇ではなかったらしく、彼は90歳になろうとするジュリアナと結婚しようとしているらしい。ヌンツィオはジュリアナに転がり込んだ遺産を狙っていたのだ。ヌンツィオの前妻2人はやはり年上の金持ちで、結婚後に不審死したらしく、同じことを企んでいる可能性があるというわけだ。

アンナとしては母親を守りたいという気持ちもあるけれど、それ以上に自分が受け継ぐことになるであろうジュリアナの遺産600万ユーロのほうが気になっているのだ。そのためアンナは家族とも相談し、ジュリアナをたぶらかしているヌンツィオを殺そうと計画することになる。ヌンツィオはスペインのメノルカ島で結婚式をする予定で、その島に滞在する結婚式前の4日間でその仕事を成し遂げなければならないのだ。

Netflixオリジナル作品 『何がなんでも! 遺産でリッチ』

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母親の執着するもの

実際のところはわからないけれど、イタリア人というのは家族の絆が密接というイメージがある。本作ではアンナの母親を守るためとはいえ殺人を計画するわけでちょっと普通ではないのだが、それでも「家族なんだから」という理由で子供たちもその計画に参加させられることになっていく。

最初の計画の立案者はアンナで、具体的な方法は娘のアーレが探し出してくる。この家では女性が力を持っていて、男性陣はほとんど言いなりという弱い立場にある。一番弱いのが長男のエミリオで、妹のアーレにもバカにされて何となくかわいそうな役回りになっている。

実は本作はシリーズ第2作ということらしい。私も最初は知らずに観ていて、もちろんそれでも問題なく観られるコメディとなっている。その前作というのが『何がなんでも! ファミリー・リユニオン』だ(この作品もNetflixで配信中)。原題は「Natale a tutti i costi」というもので、「何があってもクリスマス」という意味らしい。

『何がなんでも! ファミリー・リユニオン』は、本作と同じ面子が登場する作品で、こちらも金のことが大いに問題になっている。アンナは家族で一緒にクリスマスを過ごすということが何より大事なのだが、子供たち二人は連れなくて、独立して以降はあまり実家に戻ってこようとしない。子供たちを実家に連れ戻すためにアンナと旦那が考えたのが、「遺産を相続した」という嘘だったのだ。

その嘘を子供たちが知ることになると、現金な二人はいそいそと両親にご機嫌を伺いにやってくるようになる(4人で一緒にベッドに寝てみたりする)。それでも実際には遺産などないわけで、アンナと旦那は金持ちになったかのように偽り、子供たちの気持ちをクリスマスまで維持しようと四苦八苦するという話なのだ。

この前作を観ると、イタリア人は家族が密接というイメージは崩れるかもしれない。それでも母親の子供たちに対する執着はすごいものがあって、いつも隣家の奥さんとの自慢話では子供たちとの関係がネタになっている。本作のアンナが遺産に執着するというのも、金があれば子供たちがそばに居てくれるというのをわかっているからということになる。

家族が密接というよりも、母親が子離れできないことが根底にあるのが、この家族なのだ。それがイタリア人一般に言えることなのかどうかはわからないけれど……。

Netflixオリジナル作品 『何がなんでも! ファミリー・リユニオン』

チェッカーロ会とは?

そんなわけで前作でアンナが相続した遺産というのは嘘だったわけだけれど、前作の最後で本当に遺産がアンナの母親ジュリアナに転がり込むことになる。そのまま行けば遺産はアンナへと渡ることになる。何と言っても、ジュリアナはもう90歳になる老婆だから。ところがそこへヌンツィオが現れて邪魔になるというのが続編である『何がなんでも! 遺産でリッチ』ということになる。

とはいえ、殺害計画は失敗ばかり(排ガス自殺に見せかけようとしたら電気自動車だったというオチがおかしい)。それでもアンナにとっては、家族みんなで何かをやるということこそが重要なのかもしれない。殺人だろうがクリスマスだろうが、子供たちと一緒ならどちらでも楽しそうなのだ。

心配性のエミリオは“殺し”という言葉を使うのが恐ろしくて、隠語を使ってそれを表現しようとする。そうすれば万が一それを人に聞かれても問題ないということになる。とはいえ、「チェッカーロ会に行く」という隠語はかえって意味不明で謎めいているけれど……。

「金の切れ目が縁の切れ目」というけれど、家族においてもそれは変わらないのかもしれない。あまりにも現金すぎる子供たちと、それでも何とか子供たちの気を引きたい親たちの涙ぐましい努力がちょっといじらしい

劇場に足を運ぶほどのクオリティではなくとも、Netflixなら気軽に観られる。前作がそれなりに評判がよかったから続編もできたということなのだろうし、本作も4人家族のキャラが立っていてなかなか楽しめる作品になっている。

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