『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』 オダギリジョーの独壇場

日本映画

監督・脚本は『ある船頭の話』オダギリジョー

主演は『本心』池松壮亮

物語

狭間県警鑑識課警察犬係のハンドラー・青葉一平(池松壮亮)。
一平の相棒は、数々の難事件を解決に導いた伝説の警察犬・ルドルフの子供であるオリバー。しかし、一平には、どういうわけか、オリバーが口が悪くやる気がない、女好きで慢性鼻炎の着ぐるみのおじさん(オダギリジョー)に見えている。
ある日、一平や鑑識課メンバーの前に、隣の如月県のカリスマハンドラー・羽衣弥生(深津絵里)がやってきた。如月県でスーパーボランティアのコニシさん(佐藤浩市)が行方不明になったため、一平とオリバーに捜査協力を求めてきたのだった。
「コニシさんが海に消えていくのを見た」という目撃情報を基に、コニシさんのリヤカーが残されていた海辺のホテルに向かった一平とオリバー、羽衣だったが…

(公式サイトより抜粋)

オダギリジョーの独壇場

オダギリジョーは最近では『夏の砂の上』のプロデューサーもやっていたけれど、もともとは映画監督を目指していたらしい。その後はどういう経緯か俳優として活躍することになったけれど、製作側の仕事をしたいという意欲もあるということなのだろう。本作では脚本・監督から、企画や編集までほとんどすべてをこなしている。

本作はNHKで放送されたテレビドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』の映画版だ。このドラマはオダギリジョーがオリジナルの企画を出し、演出・脚本・編集も担当しているということで、オダギリジョーがすべてに関わりコントロールしているようなドラマになっているようだ(残念ながら、私は見ていない)。このドラマはシーズン2まで放送されて、とても好評だったとのことで、今回の映画化につながったということらしい。

オダギリジョーはすでに映画監督デビュー作として『ある船頭の話』を撮っている。この長編デビュー作はベネチア国際映画祭のベニス・デイズ部門にも出品されたアーティスティックな作品で、エンタメとはほど遠い作品だった。そのデビュー作からすると、本作はまるで毛色の異なる作品になっている。

©2025「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」製作委員会

着ぐるみ野郎とゆかいな仲間達

『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』は、狭間県という架空の場所の警察が舞台となっていて、そこの警察犬オリバーとそのハンドラー・青葉(池松壮亮)が一応の主人公となっている。ハンドラーというのは警察犬のパートナーみたいな役割で、その世話や訓練を行う係らしい。

オリバーは伝説の警察犬・ルドルフの子どもということもあり、優秀な警察犬として認められている。しかし、ハンドラーの青葉だけにはなぜか女好きで慢性鼻炎の着ぐるみのおじさんに見えている。しかも、そのおじさんを演じるのが本作のすべてを取り仕切るオダギリジョーなのだ。

オダギリジョーが犬の着ぐるみを着た口の悪いおじさんになるという設定が面白い。その絵面だけでも笑えるのだが、青葉を演じる池松壮亮との絶妙なやり取りも楽しい。その二人を囲むキャラもなかなか癖がある面々になっている。

青葉の上司である漆原(麻生久美子)は唐突にシコを踏んでみたり、なぜか歌舞伎の真似事をしてみたりというつかみどころのないキャラだ。そして、青葉もハンドラーとしての基礎を教わったという超優秀ハンドラーの羽衣(深津絵里)は、動物の言葉がわかると噂されている。

オリバーも羽衣には言葉が通じてしまうかのようで、やりづらいらしい。そんな羽衣はビックリすると失神してしまう癖があり、ちょっとのことで気を失って倒れ込んでしまう。こんなオリバーたち警察の面々のやり取りはほとんどコントになっていて、奇妙な間合いで笑わせてくれる。

©2025「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」製作委員会

スポンサーリンク

 

誰のせい?

オダギリジョーの監督デビュー作『ある船頭の話』は、私自身の勝手な見立てではキム・ギドクの作品から大いに影響を受けた作品になっていたように思えた。一方の本作は6本のオムニバス作品のようでもあり、デヴィッド・リンチ作品からの影響を受けつつ、さらに『ビートルジュース』やインド映画のスパイスを加えたような、かなり突き抜けたハチャメチャな作品になっている。

冒頭のどこかのバーの雰囲気はまるで『ツイン・ピークス』の世界になっている。ベルベッドの赤いカーテンや独特なノイズとかは明らかに『ツイン・ピークス』を意識しているように思える。そして、ラストでは別世界である「たこ焼き世界」を経由して、冒頭のバーへと回帰することになる。するとなぜか冒頭に登場していたある人物が別の人物に変わっている。これはどういう意味なのか? 恐らくこれは『マルホランド・ドライブ』を意識しているのだろう。尤も、『マルホランド・ドライブ』そのものもよく理解していないから、なおさら本作は意味不明だったけれど……。

そのバーの中にもあった赤いドアは、ちょっと歪んでいる。これは「ポータル」とも呼ばれる別世界への扉ということになるけれど、このドアの形は『ビートルジュース』のそれを思わせる。その証拠に、羽衣がそのドアを発見すると、唐突に「エーオ」などど不思議な呼びかけを始めることになる。これは『ビートルジュース』で使われている「バナナボート」という曲の「Day-O」に影響されたものだろう(この曲は続編の『ビートルジュース ビートルジュース』でも出てきた)。

『ビートルジュース』ではビートルジュースというキャラが、人間たちを歌わせ躍らせることになっていたけれど、本作でも唐突に登場人物が踊り始めることになる。これまたかなり強引な展開だけれど、ちょっとだけ『RRR』の“ナートゥ”を思わせるダンスはもちろんインド映画のパロディで、あまりにもあからさまだからか踊り終わった瞬間に自虐的にツッコんでいる。

©2025「THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE」製作委員会

最後まで賑やかなキャラがワチャワチャやるコメディで済ますこともできたのかもしれないけれど、後半からはスーパーボランティアのコニシさん(佐藤浩市)や、オリバーの父親犬のハンドラーだった溝口(永瀬正敏)が迷い込むことになる別世界を描いていく。それが「たこ焼き世界」なのだが、このエピソードがいまひとつ弾け切れてなかった気もする。一応、それがないと『マルホランド・ドライブ』的な終わり方にできなかったということなのかもしれないけれど……。

出演陣が多彩でちょっとだけ顔を出すキャラも多くて賑やかだった(鹿賀丈史が女装に目覚めるエピソードがおかしかった)。オダギリジョーの奥様・香椎由宇も占い師として顔を出すし、8年ぶりの映画出演らしい深津絵里は相変わらず美しかった。

なぜか麻生久美子が唐突に歌舞伎をやり出し、歌舞伎界への言及もあったけれど、その時の台詞にあった「カガワ」というのは『ゆれる』でも共演している香川照之のことなんだろうか? ちょっと謎めいた台詞だったような……。もしかするとそんなキャラがテレビ版に登場していただけなのかもしれないけれど。

本作は映画として独立していると言われているけれど、キャラはテレビ版を引き継いでいる部分もあり、テレビドラマを見ていないとよくわからない部分もある。私が本作を十分に楽しめなかったとしたら、テレビ版を見ていないからかもしれない。とはいえNHKのドラマというのはなぜか普通の動画配信サイトで気軽に見られるものにはなってない。つまりは本作が楽しめなかったのはNHKのせいということにしておきたいと思う(調べてみると、すでにソフトは発売されているらしいけれど)。

 

コメント