監督は『タイタニック』などのケイト・ウィンスレット。彼女にとっては本作が監督デビュー作。
脚本はジョー・アンダースで、彼はケイト・ウィンスレットと元夫である映画監督サム・メンデスとの間にできた息子さんとのこと。
Netflixオリジナル作品として、2025年12月24日より配信中。
物語
物語はクリスマスを目の前にした12月。大人になった4人の子どもたちとなにかと手のかかる父親は、母親の病気が思いもかけず悪化していることを知る。いつ別れの時がくるか分からない状況にどう対処したらいいのか、そもそも難ありな家族関係はカオスに陥る。そんな中、母ジューンは持ち前のウィットで自分らしく別れの時を迎える準備を整えていく。鋭いユーモア、率直な物言い、そしてあふれるほどの愛情で。
(公式サイトより抜粋)
大女優の初監督作品
アメリカではクリスマスの時期になると『素晴らしき哉、人生!』や『ホーム・アローン』みたいなクリスマス映画を観るというのが定番だと聞いたことがある。だからなのかNetflixでは、クリスマスの時期にそんなクリスマス映画を大量に投入している。『グッバイ、ジューン 幸せな人生の終い方』も、クリスマス・イヴに配信が開始されたクリスマス映画のひとつということだろう。
話題としては、『タイタニック』で一躍人気女優となり、その後アカデミー賞主演女優賞まで獲得した大物女優ケイト・ウィンスレットの初の監督作品ということだろう。昨年はマイケル・キートン監督作品の『殺し屋のプロット』やオダギリジョー監督作品の『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』などもあったけれど、映画に携わる俳優が監督業に興味を持つことはよくあることなのだろう。
さらに本作の場合は脚本を書いたのが、ケイト・ウィンスレットの息子さんのジョー・アンダースということもあり、なおさら自らの手で作品を仕上げたかったということなのだろう。
本作がどこまでがジョー・アンダースの経験に基づくもので、どこからがフィクションなのかはわからないけれど、劇中にはケイト・ウィンスレットも登場することになり、その役柄もどこかケイト本人を思わせなくもない。つまりはケイト・ウィンスレット自身の家族の物語と重なっている部分も多いのだろうし、そんな話を映画化するのに適しているのは彼女自身しかいないということなのかもしれない。

『グッバイ、ジューン 幸せな人生の終い方』
Netflixにて2025年12月24日より配信中
母親の気がかりとは?
話としては「ありがち」とも言える。別の言い方をすれば、誰にでも起こり得る話とも言えるだろうし、普遍的な話とも言えるかもしれない。ある一家の母親ジューン(ヘレン・ミレン)が癌で入院することになる。ジューンはすでに3年も闘病していて、今回の症状は特に深刻で、クリスマスまではもたないだろうと宣告されることになる。
そんな状況の中、家族が久しぶりに集まることになる。ジューンには子どもが4人いる。三姉妹プラス弟だ。ジューンと一緒に住んでいるのは一番年下のコナー(ジョニー・フリン)で、三姉妹はすでに独立している。多分、長女がヘレン(トニ・コレット)で、次女がジュリア(ケイト・ウィンスレット)、そして三女がモリー(アンドレア・ライズボロー)ということなのだろうと思う(ヘレンはジュリアのことを妹と呼んでいるから)。ヘレンはちょっと変わり者で、スピリチュアルなことに凝っていて、周囲はちょっと呆れつつも好きにさせているらしい。
一番しっかりしているのがジュリアで、モリーは何かと怒り散らしている。このジュリアとモリーの関係が一家の大きな問題となっている。二人はなぜか犬猿の仲みたいになっているのだ。
これからまもなく死ぬであろうジューンとしては、この世に遺していくことになる家族のことが気にかかる。その心配が解消されなければ、安心して死ぬこともできないということになる。ジューンは策を弄して二人を仲直りさせようとするのだ。
ジューンは死ぬ覚悟はできているのか、自分が死ぬことを気にするふうではない。ジューンは「死んでも迷惑じゃない?」とジュリアに訊ねるのだが、自分が死んだ後の家族のことばかりを気にしているのだ。一家を取り仕切っている母親ってものはそんなものなのかもしれない。
ジューンはクリスマスまでもたなかったけれど、多くの家族に囲まれて死ぬことになるラストは一種の理想的な死に方にも見えた。

『グッバイ、ジューン 幸せな人生の終い方』
Netflixにて2025年12月24日より配信中
我が心のジュニー
母親が癌を患っていて、その母親を演じるのが大物女優である点や、三姉妹が登場するあたりでも、何となく『8月の家族たち』を思い出した。『8月の家族たち』ほど壮絶な家族のいざこざはなかったけれど……。
ケイト・ウィンスレットが監督だからか、なかなか渋い役者陣が集まっている。『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』でも共演しているアンドレア・ライズボローとの姉妹の確執のやり取りもよかったし、ジューン役のヘレン・ミレンもさすがの貫録というところだろうか。
個人的に印象深かったのは『君を想い、バスに乗る』のティモシー・スポールだ。まもなく死のうとしている奥さんジューンに対し、旦那のバーニー(ティモシー・スポール)はダメなところばかりが目立つ。息子のコナーにもダメ出しされても受け入れるしかない。どうも男はあまり役には絶たないらしい。バーニーはパブで密かにジューンに対して歌を贈るのだが、それが彼にとっての唯一の愛情表現なのだ。
この時の曲が「我が心のジョージア」だ。この曲はザ・バンドのアルバムに入っていたので知っていたのだけれど、もともとアメリカのスタンダードナンバーということらしい。レイ・チャールズが歌ったカバーバージョンが広く知られていて、その後にジョージア州の州歌として定められたということ。バーニーの歌はヘタだったけれど、ジューンに対する想いが伝わってくるようで泣かせる場面になっていた。




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