原作は奥嶋ひろまさの同名漫画。
監督は『一度死んでみた』の浜崎慎治。
主演は『国宝』の吉沢亮。
物語
銭湯で働く森蘭丸(吉沢亮)、その正体は450歳のバンパイア。至高の味わいである「18歳童貞の血」を求め、銭湯のひとり息子である15歳の李仁(板垣李光人)の成長と純潔をそばで見守る日々だったが、ある日李仁がクラスメイトの葵(原菜乃華)に一目惚れ!恋が成就してしまえば、それすなわち童貞喪失の危機!突如訪れた絶体絶命のピンチに「恋をさせてはなるものか!」と蘭丸による決死の童貞喪失阻止作戦が幕を開ける!
(公式サイトより抜粋)
妙なタイトル?
タイトルの表記が「ヴァンパイア」ではなくて「バンパイア」なのは、タイトル的に「ヴァ」ではうるさすぎるからだろう。それでなくとも「ババンババンバンバンパイア」という長さになっているのだから。
このタイトルは古い世代にはよくわかるネタになっているけれど、若い人はどんなふうに受け取ったのだろうか? 原作漫画の連載が始ったのも2021年ということでつい最近なわけで、このタイトルは若い人にはすぐには読めないし、書こうとしても難しい、かなりわかりづらいタイトルだろう。
それでも映画の予告編などでこのタイトルをその主題歌に乗せて聴くと、古い世代はすぐに耳に馴染むだろう。「ババンババンバンバン」というのはドリフターズが歌っていた「いい湯だな」の歌詞で、ドリフの番組に親しんだ世代ならば、番組でも替え歌バージョンをしばしば聴いていたわけで、リズムに乗せて自然と「ババンババンバンバン」と歌えてしまうからだ(加藤茶の合いの手の声を思い浮べながら)。
もちろんそれがバンパイアの存在と結びつく必然性はないわけだけれど、「いい湯だな」という曲に引きずられる形で、『ババンババンバンバンパイア』の主人公は銭湯で働いているバンパイアという設定になっているのだ。

©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 ©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
人気の“ヴァンパイアもの”
前回取り上げた『罪人たち』も“ヴァンパイアもの”の一種だったけれど、そのジャンルの人気というものを改めて感じさせてくれる作品になっている。
今年はその元祖というべき映画『ノスフェラトゥ』もリメイクされたし、近々公開が予定されているアニメ『鬼滅の刃』の新作だってその影響下にあるわけで、その派生形というべきゾンビものも含めたら、数限りない作品が“ヴァンパイアもの”として数え上げられることになる。そんなジャンルに新たに加わるのが本作なのだ。
主人公は吉沢亮演じる森蘭丸だが、この名前はどこかで聞いたと思ったら、あの織田信長と一緒に本能寺の変で討ち死にした人物だ。実はその蘭丸がバンパイアであり、現代まで生き続けているというのが本作なのだ。バンパイアものといっても、アプローチの仕方は様々なものがあるものだ。本作は蘭丸以外にも坂本龍馬の一族の末裔も出てきたりして、その因縁が描かれたりもする。
この森蘭丸は一説によると、信長と男色の関係にあったとも言われているらしい(そんなネタの映画を観たような気もするのだが、『GOEMON』だっただろうか?)。本作は蘭丸が現代において、若くてかわいらしい男の子・李仁(板垣李光人)に魅了されてしまうという話になっている。
蘭丸が最初に李仁に出会ったのは、李仁がまだ幼い頃の話で、それから蘭丸は李仁の実家である銭湯に居候する関係なのだ。この冒頭のエピソードに、「ペドフィリアの話なの?」と驚いたのだけれど、蘭丸は「18歳童貞の血」こそが最高だからと、今のところは李仁の純潔を守るために彼のボディーガードの役割を果たしている。それでも蘭丸は内心で李仁がかわいくて堪らないのだ。つまりは本作は“BL(ボーイズラブ)もの”なのだ。

©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 ©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
BL的くすぐり
面白キャラが満載の作品で、登場人物はジャイアンが自分の歌を歌うように、客に向って自己紹介の歌でキャラを解説してくれる。そして、先ほども記したように本作はBLもので、その中心には蘭丸がいる。蘭丸は李仁が好きで、その李仁はクラスの女の子・葵(原菜乃華)が好き。でもその葵はバンパイアである蘭丸にゾッコンだから、妙な三角関係になっている。
それから葵の兄である脳筋男フランケン(関口メンディー)も、ケンカが強い蘭丸を“兄貴”と慕うことになる。バンパイアキラーである坂本(満島真之介)が、実は蘭丸に血を吸われたいと考えている変態であると判明するあたりが個人的には一番ウケた。

©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会 ©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022
本作のターゲット層をどこに設定しているのかは知らないけれど、BL的なくすぐりがあって、腐女子と言われる人たちには堪らないものがあったりするのかもしれない。主演は国宝級のイケメンとされる吉沢亮で、その吉沢が愛でるのが『陰陽師0』で雅な帝を演じていた板垣李光人だ。
ちなみにこの李仁というキャラの名前と、演じる板垣李光人の名前が被っているのは、原作者が初めから板垣李光人をイメージしてキャラを造形していたかららしい。まさにピッタリの役柄ということになっている。
ラスボス的に蘭丸の兄である森長可(眞栄田郷敦)も登場し、イケメンバンパイア対決を見せてくれたりもするし、なぜか蘭丸が裸のシーンが多いのも腐女子のウケを狙ってということなのかもしれない。
とりあえずネタはかなりベタだし、ほぼ予想通りに展開していくために、とてもわかりやすい。その分、誰もが楽しめる作品とも言える。すれ違いの笑いも、それぞれの独白が観客には丸聞こえになっているから、どこにも謎というものはなく安心して楽しめる作品になっている。ちょっとだけ続編もありそうな雰囲気もあったりして、もしかするとシリーズ化ということもあるのかもしれない。
吉沢亮は大ヒットとなっている『国宝』で、より一層株を上げたわけで、その勢いに乗った形で公開になった本作は、上映延期が功を奏したのかもしれない。
『国宝』はその美しさが際立っていたけれど、真面目一辺倒で重苦しいところもあったわけで、本作はそれとは好対照な姿を見せてくれる。「童貞喪失絶対阻止」を謳うバンパイアというだけで妙なキャラだし、大真面目な顔で「たらい落とし」のコントをやるという、とぼけた味も悪くなかった。





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