原作はJ・P・モーニンガー。
監督は『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や『砂漠でサーモン・フィッシング』のラッセ・ハルストレム。
主演は『ナイブズ・アウト: グラス・オニオン』のマデリン・クライン。
原題は「The Map That Leads to You」。
8月20日よりPrime Videoにて独占配信中。
物語
完璧に計画された人生を始める前に、友人たちとヨーロッパを旅する若い女性ヘザーを描く。ジャックとの偶然の出会いが、予期せぬロマンスを芽生えさせ、深い感情の発見へと導く。秘密と人生の選択に二人の絆を試されながら、ヘザーの人生は大きく変わることに。
(公式サイトより抜粋)
スペイン旅行気分になれる
Amazon Prime Videoの新作にラッセ・ハルストレム監督の名前を見つけたから観てみたのだが、スペインの観光案内みたいな作品だった。
スペインの有名な観光地が美しく撮られていて、そんな場所を巡るのは確かに楽しいけれど、ラッセ・ハルストレムらしさみたいなものはあまり感じられなかったかもしれない。それでもラブストーリーとしては定番を外しているわけではないし、気軽に観られる作品にはなっている。
主人公のヘザー(マデリン・クライン)たち3人は、卒業旅行にスペインへと向かう。ヘザーは観光が目的で、コニー(ソフィア・ワイリー)は食が目当て、エミリー(マディソン・トンプソン)はクズな彼氏を忘れるための旅ということらしい。エミリーはバルセロナへ向かう電車の中で早々とビクターという男性と出会い、どこかへ消えてしまう。
結局、3人は旅の合間のパートナーみたいな男性をそれぞれ見つけることになる。ヘザーの相手はかなり変わっている。電車の席がほぼ埋まっていたからか、彼は座席の上にある荷物棚をベッド代わりにして寝始めるのだ。そんなふうにしてヘザーはジャック(KJ・アパ)と出会うことになる。
3人の中で最初に相手を見つけたエミリーは、次の日、自分が騙されていたことに気づく。散々お酒を飲まされて金目のものやパスポートなどをビクターに盗まれてしまったのだ。しかしジャックが機転を利かしてビクターから奪われた物を取り返すことになり、おまけにビクターが盗んだと思しき大金まで手に入れてしまう。そのあぶく銭で3人はスペインをあちこち旅をして回ることになるのだ。
とりあえずバルセロナに着いたヘザーたちが行くのは、あのガウディのサグラダ・ファミリアだ。そこから始まって、牛追い祭りも出てくるし、風光明媚な海辺の街も出てきて、そこにはダリが住んでいた家があったりする。さらにはエミリーは自分の軽率な行動を反省したのか巡礼をすると言い出して、有名なサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路もちょっとだけ顔を出すことになる。
なぜかあちこちにギターを持った歌い手がいて、陽気な音楽を奏でつつ、スペインの観光地をあちこち堪能させてくれ、ちょっとしたスペイン旅行の気分が味わえる作品になっている。

©Amazon Content Services LLC
“プラン”と“ノー・プラン”
ヘザーとジャックは対照的だ。女たち3人のまとめ役みたいなヘザーはしっかり者なのだろう。計画を立てなければ気が済まない人らしい。自由気ままなエミリーからは「ママ」などともからかわれている。
一方でジャックは当てもなく旅をしているらしい。船員になって甲板の掃除をしたりしながら、あまり働きもせずに自分の好きなことだけをしているらしい。
ヘザーはすべてを計画している。大学を卒業し、この後はニューヨークに引っ越して銀行に勤めることになる。ヘザーからしたらジャックとの出会いはまったく計画になかったことだろう。しかしながらヘザーはそんなジャックに惹かれていく。
3人は結局予定外の行動に走る。エミリーは巡礼の旅に行き、コニーはスペインワインの勉強に行くことになるのだが、レイフというスペインで出会った男が同行することになったのは計画になかったことだ。
そして、ヘザーもアメリカに戻って仕事のための準備をするはずが、ジャックと離れがたくなり滞在を延長してスペインを回ることになるのだ。ヘザーはジャックとの将来のことを計画し始めることになるわけだが……。
※ 以下、ネタバレもあり!

©Amazon Content Services LLC
今を生きる
ジャックにはヘザーに秘密にしていることがある。健康上の不安だ。しかし、観客(あるいは視聴者)にはそれは示されている。だから観客としては、もどかしい思いでヘザーを見守ることになる。
ジャックがヘザーと一緒にアメリカへ渡ると言いつつ、嘘をついて空港で姿を消した理由がわからなくもないからだ。だから一度別れてからの再会は泣かせるけれど、盛り上げ方は意外とあっさりしていてちょっと物足りない気もした。
ジャックとヘザーは「対照的」と書いたけれど、実際にはジャックも、もともとはヘザーと変わらなかったのかもしれない。実は、ジャックはかつて経済学と統計学をやっていて、ヘザーと似たような仕事をしていたとも漏らしている。
しかし、病が彼を変えることになったのだ。「もうすぐ死んでしまう」と分かれば、無駄なことをやっている余裕はない。それがヘザーが出会ったジャックの姿で、ヘザーからすればジャックは何とも自由気ままに生きている男に見えたのだろう。
ヘザーはジャックと別れた後、銀行の仕事の退屈さで疲弊する。しかしジャックと一緒の時は悩まなかった。それは「本当にしたいこと」をしていたからだろう。ジャックのことが好きでずっと一緒にいたいと感じていたわけで、何も悩む必要がなかったわけだ。
「メメント・モリ」と言うけれど、死を目の前にすると世界は別様に見えてくる。ジャックが曽祖父の日記の足跡を追っていたのも、曽祖父が第二次世界大戦で死を間近に感じていたからなのだろう。ジャックはその日記から自分の成すべきことを見出そうとしていたのかもしれない。
そんなわけで『君を見つけるための地図』は“余命もの”でもあるのだけれど、ラストは再会の感動のままで終わるため、何となくハッピーエンドみたいな高揚感を維持したまま終わる。そのあたりツッコミが足りない気がしないでもないけれど、ちょっと泣かせるラブストーリーにはなっている。




コメント