監督は『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』のサム・ライミ。
主演は『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』のレイチェル・マクアダムス。
原題は「Send Help」。
物語
コンサル会社の戦略チームで働くリンダは、誰よりも数字に強く有能。 しかし、パワハラ気質の新上司ブラッドリーに目をつけられてしまう。 そんなある日、出張中の飛行機事故によって、無人島で二人きりに…。 上司と部下、二人の立場が次々と逆転する先に待ち受ける、想像を超える《大どんでん返し》とは?
(公式サイトより抜粋)
無人島映画
「パワハラ“クソ”上司と無人島で二人きり」というのが本作の宣伝文句だ。無人島映画と言えば、『流されて…』やそれを現代風にアレンジした『逆転のトライアングル』などがあるけれど、それらと同じように『HELP/復讐島』でも登場人物の立場は逆転することになる。サム・ライミ作品としては『スペル』以来の快作といった感じもして、とても楽しめる作品になっていたと思う。
リンダ(レイチェル・マクアダムス)という主人公は、とりあえず優秀だとされている。その会社では時期副社長候補とされていたのだ。ところがそれを推していた社長は亡くなってしまい、次期社長として息子のブラッドリー(ディラン・オブライエン)がやってくる。このブラッドリーがパワハラ“クソ”上司ということになる。
ブラッドリーは父親の前社長の遺した言葉を気にしない。優秀なリンダよりも、ゴルフが出来て誰からも好かれる営業スマイルを持っている別の若者を副社長に選ぼうとするのだ。リンダはそれに対して異議申し立てをするものの、まるで取り合ってはもらえず、涙を堪えることになる。
ところが出張先への移動中に飛行機事故が発生し、リンダはその“クソ”上司・ブラッドリーと二人きりになってしまう。

©2026 20th Century Studios. All Rights Reserved.
楽しいサバイバル
無人島ではリンダの優秀さが一気に発揮される。というか、リンダはもともとサバイバルを題材にしたリアリティ番組が大好きで、サバイバル技術を学んでいたらしい。だからリンダは無人島にたどり着いたことで、逆にイキイキとしてくる。無人島が彼女の優秀さを明らかにするのだ。
真水の確保から始まって、雨風をしのげる場所を作り、火を起こして食糧としての巨大なイノシシを退治する。まさにサバイバル生活を送っていくリンダとは対照的に、上司のブラッドリーはケガをしてしまったこともあり何もできない。
しかしながらこのブラッドリー、命の恩人とも言えるリンダに対する感謝が足りない。無人島で生きていけること自体がありがたいことであるのに、すぐに元の生活に戻ることばかりを考え、救助要請ばかりをリンダに要求するのだ。
リンダはそんなブラッドリーを何とか矯正しようとする。リンダが動くことすらできないブラッドリーをしばらく放っておくと、彼はすぐに音を上げて降参する。ブラッドリーはリンダの優秀さを認め、自らの非を詫びることになるのだが……。
※ 以下、ネタバレもあり!

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復讐なの?
『HELP/復讐島』は「復讐もの」とされているけれど、これは日本版のタイトルでしかない。無人島では社会の序列みたいなものは役に立たない。だからそこでは立場が入れ替わったりする。会社の中では肩書きに涙を飲んだリンダが、その“クソ”上司に復讐する。配給会社としては、そんなわかりやすい構図の作品として宣伝したほうが観客に受け入れられやすいと考えたということなのだろう。
ところが意外なのは、本当にヤバかったのはリンダのほうだったというところが本作の面白いところだろう。確かにブラッドリーが“クソ”上司であることは間違いない。あれだけ助けられたにもかかわらず、ブラッドリーはリンダに毒を盛って、ひとりで無人島脱出を試みたりもするのだ。そんな意味では彼は“クソ”だけれど、ブラッドリーは結局は単なるボンボンの甘ちゃんでしかない。
後半になるとわかってくるのが、リンダの真の意味での優秀さということだろう。リンダは戦略企画部の部長だったようだが、彼女が優秀なのはサバイバル技術だけではなかったのだ。すべてのおいてリンダのほうが優秀で、ブラッドリーはまったく彼女に敵わない。そんなことが明らかになってくるわけで、ブラッドリーは大袈裟に高笑いをしていたことが腹立たしいくらいで、リンダにとっては復讐するほどの害もない男なのだろう。

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レイチェル・マクアダムス!!
リンダはちょっとウザいキャラではあった。ブラッドリーとリンダとの最初の接触で印象的なのが、リンダの押しの強さだろう。リンダは妙にポジティブで社内でも浮いているし、新社長ブラッドリーとしては押しの強い部下の態度に戸惑い、リンダを遠ざけたかったのだろう。しかしブラッドリーはリンダから散々な目に遭わされることになるわけだ。
リンダは本作である一線を越えてしまう。それにもかかわらず、なぜか最後はリンダだけが生き残ってハッピーエンドみたいなことになっているところが不思議と言えば、不思議な作品だろう。
個人的には本作は『スペル』とよく似ているように感じた(ゲロ塗れやジャンプスケアなどの共通点もある)。『スペル』は主人公がある老婆から恨みを買い、散々嫌な目に遭わされることになる作品だった。極端なことを言えば、その『スペル』における老婆が、本作のリンダなのだ。
ブラッドリーの視点からすれば、押しの強い部下と一緒という無人島生活もうんざりだろうし、苦手な魚を無理やり食べさせられたり、さらには大人しくさせるためと去勢まで施されそうになるわけで、まさに散々な目に遭わされたというわけだ。
主人公であるにもかかわらず、ほとんど悪役みたいな立ち位置のリンダ。ラストもポジティブ思考全開で、すべてが丸く収まったようにも見えてしまうというのは、リンダを演じたのがレイチェル・マクアダムスだからだろうか。
レイチェル・マクアダムスは『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』にも出ていたはずだが、そっちの記憶はない。個人的に彼女の作品で気に入っているのは『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』だ。『アバウト・タイム』はレイチェル・マクアダムスの笑顔がとても素敵で、幸福感に満ちたこの作品の雰囲気を決定づけていたのだ。
リンダというキャラは最初はダサいオバサン然としていたけれど、無人島でそのサバイバル能力を発揮し始めたあたりからとても魅力的になっていく。ラストはかなり危なっかしいバランスの上に成立しているけれど、レイチェル・マクアダムスがよかったからそれも許せてしまう気がする。




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