監督・脚本は『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のアレックス・ガーランドと、米軍特殊部隊として従軍経験を持つレイ・メンドーサ。レイ・メンドーサは本作の軍事アドバイザーも務めている。
原題は「Warfare」。
物語
2006年、イラク。監督を務めたメンドーサが所属していたアメリカ特殊部隊の小隊8名は、危険地帯ラマディで、アルカイダ幹部の監視と狙撃の任務についていた。ところが事態を察知した敵兵から先制攻撃を受け、全面衝突が始まる。反乱勢力に完全包囲され、負傷者は続出。救助を要請するが、さらなる攻撃を受け現場は地獄と化す。本部との通信を閉ざした通信兵・メンドーサ、指揮官のエリックは部隊への指示を完全に放棄し、皆から信頼される狙撃手のエリオット(愛称:ブージャー・ブー(鼻くそブーの意))は爆撃により意識を失ってしまう。痛みに耐えきれず叫び声を上げる者、鎮痛剤のモルヒネを打ち間違える者、持ち場を守らずパニックに陥る者。彼らは逃げ場のない、轟音鳴り響くウォーフェア(戦闘)から、いかにして脱出するのか。
(公式サイトより抜粋)
戦地最前線にぶち込まれる
チラシなどに記されているキャッチコピーによれば、本作は観客を「95分間、戦場に閉じ込める」ことになるのだとか。確かに戦場のリアルを観客に追体験させるような作品になっていたと思う。突然の爆発の音響効果で観客を飛び上がらせるような場面が何度かあり、劇場で観なければうまく作品の意図も伝わらない可能性もあり、劇場で観るべき作品になっている。
『ウォーフェア 戦地最前線』の舞台となっているのはイラクだ。ブッシュ大統領がイラクに大量破壊兵器があるとして、アメリカがイラクに攻め込んだわけだが、本作の作戦もそうした闘いの中の一つということらしい。
しかしながら本作の作戦がどんな目的だったのかはよくわからない。一応、アメリカの特殊部隊たちがアルカイダと思しき者の監視をしていることはわかるのだが、なぜか監視対象は監視されていることに気づいていて、兵士たちは負傷者を抱えて撤退することになるだけだからだ。
本作は「劇場で観るべき作品」だと記したけれど、というのも本作は音響効果にかなり拘っているからだ。冒頭では戦闘前の戦意高揚なのか、兵士たちがエアロビのビデオを観てはしゃぐ姿が描かれる。重低音が響き渡るようなこの冒頭から一転、戦地になると静けさが支配する。兵士たちは夜陰に紛れる形で戦地に乗り込んで静かに対抗拠点を確保するのだ。
この前半部分は静けさがかえって怖いくらいだ。戦地のど真ん中なわけで、兵士たちも静かに敵を監視している。嵐の前の静けさというヤツだろう。しかし監視対象の側も次第に動きを見せるようになり、現地の言葉で何らかの放送が流れ、住民たちが蜘蛛の子を散らすように消えていった後に敵からの攻撃が始まる。
最初は手榴弾を投げ込まれるところから始まり、特にインパクト大だったのは、負傷兵を抱えつつ逃げる途中でIEDと呼ばれる即席爆弾が爆発するところだろう。ここから本作は一気に地獄と化していくことになるのだ。
この即席爆弾の威力が凄まじい。通訳として雇われていたイラク人はあっという間にバラバラになるほどで、アメリカ兵にも二人の重傷者が出ることになるのだ。
この爆弾はその音響効果も凄まじく、観ている側も飛び上がるくらいの轟音になっている。そして、その後しばらくは鼓膜をやられた兵士の立場と同じような状況になり、くぐもった音が続くことになる。兵士たちが戦場で体験した戦闘に、観客も巻き込まれたような形になっていくのだ。

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阿鼻叫喚の地獄を体験する
本作では撤退戦がほとんどを占めるわけだが、その戦場はほとんど地獄と化すことになる。戦争映画で負傷者が描かれることはあるけれど、その痛みにもだえ苦しむ姿を本作ほど延々と映し出した作品もないんじゃないだろうか。負傷兵はその傷の耐え難い痛みに絶叫する。飛び交う銃弾の音すら聞こえなくなるほどの絶叫が延々と響くことになる。
本作では本来はその傷の手当をするべきエリオット(コズモ・ジャービス、『SHOGUN 将軍』で主人公を演じていた人)という衛生兵が最初に負傷してしまったため、レイ隊員(ディファラオ・ウン=ア=タイ)が傷の手当をしている(このキャラは共同監督のレイ・メンドーサ自身らしい)。不慣れということもあって、なかなか手当てがうまくいかずにその度に負傷兵は絶叫し、モルヒネすらなかなか効かずに延々と叫び声が響き渡ることになる。
死んでしまったほうが楽なんじゃないかと思えなくもないほどの絶叫で、観ている側としてもキツいものがある。本作はそんな負傷兵を抱えて敵陣から撤退することになるのだが、その間もずっと絶え間なく叫び声は続くことになるのだ。

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虚しい闘い?
本作のアメリカ兵は特殊部隊で、いわゆるネイビーシールズと呼ばれる人たちらしい。兵士の中でも精鋭たちが集まる部隊というわけだ。しかしながら本作の彼らを見ていると、どうもその能力がうまく発揮されているとは思えない。作戦はあからさまに失敗であり、彼らはほとんど何もしないうちに撤退を余儀なくされることになる。
兵士たちはイラクのごく普通の一般家庭を占拠することになる。夜中に外国の兵士たちに家に押し入られる住民側の恐怖というのは察するに余りあるものがあるだろう。兵士たちのひとりが去り際に謝っていたけれど、家を占拠されて戦地最前線にされてしまう側としては、アメリカという国に対して怒りを覚えても当然だろう。
ちなみにこの家では、内部に仕切りがあって隣を別の家族に貸していることになっていた。その家を戦略拠点にする都合上、その隣人たちも拘束するほかなく、アメリカ兵は仕切りの壁をぶち抜いて隣も占拠することになる。
劇中では、壁を夜中にぶち抜いたことが敵に知られたのではという台詞もあったけれど、実はこの隣は抵抗勢力のアジトだったのだとか。だから敵側は最初からアメリカ兵の存在に気づいていたわけだけれど、戦闘当時はそんなことはわからなかったらしい。この事実は本作の撮影中に明らかになったことらしく、このことは公式サイトの「戦況解説動画」で語られている。

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そんなわけで本作はネイビーシールズが主人公となっているにもかかわらず、彼らのカッコよさみたいなものは皆無となっている。ネイビーシールズはこれまでも様々な映画でヒーロー然として取り上げられたりもしたけれど、本作ではあまり役に立っていないのだ(戦車と戦闘機の性能は凄かったけれど)。
本作は実話だ。共同監督のレイ・メンドーサが実際に体験してきた戦場を再現しようとしているのが本作だ。当時の兵士たちから聞き取りを行い、彼らの記憶から本作を再現しているとのこと。
エンドロールでは、実際に戦闘に参加した兵隊の実像と、それを演じた俳優の姿が示されることになる。しかし珍しいことに本作では実際の兵士たちの半分くらいは顔出しNGになっている。というのは本作で描かれる作戦がどう見ても失敗であり、誇れるようなものではないということだろうか。
役者陣でエンドロールに一番最初に登場するのはウィル・ポールターだが、彼は小隊のリーダーを演じていた。ところがこのリーダーは爆発に巻き込まれて負傷したということもあったのだろうが、戦闘のあまりの激しさに意気消沈してしまっている。彼は途中で合流した別小隊のリーダーに指揮を任せることになるのだが、闘う意欲を挫かれるほどの激しい闘いだったことは間違いないし、あの状況ではそんな兵士が出てもおかしくないだろう。
本作は観客にもリアルな戦地最前線を体験させるものだ。つまり観客は95分間の阿鼻叫喚の地獄を味わうことになるわけだ。本作の爆撃の凄まじさや負傷兵の絶叫を体験してしまったら、二度とそんな体験はしたくなくなるだろう。そんな意味で本作は反戦映画として機能している。
結局、アメリカが主張していた大量破壊兵器は見つからなかったようだし、アメリカは、一体、何をしにイラクに行ったのだろうか? 本作は意図的に虚しい闘いだったことを示そうとしているようにも思えた。
アメリカとしては単にフセイン大統領が邪魔だったということなのだろうか。ちなみにイラクとの闘いではロシアと中国が反対していたということだが、現在、アメリカがロシアや中国に対して自制を促しても、アメリカが似たようなこと(?)をしているわけで説得力に欠けるのかもしれない。



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