『クライム101』 カッコイイとは、どういうこと?

外国映画

原作は、『野蛮なやつら/SAVAGES』ドン・ウィンズロウの書いた中編集『壊れた世界の者たちよ』の中の一編「犯罪心得一の一」。

監督・脚本は『アメリカン・アニマルズ』バート・レイトン

主演は『アベンジャーズ』などのクリス・ヘムズワース

物語

アメリカ西海岸線を走るハイウェー〈101〉号線上で、数百万ドルの宝石が消える強盗事件が多発。4年間にも及ぶデーヴィスの犯行は一切のミスがなく完璧だったが、人生最大の大金を得るために高額商品を扱う保険会社に勤めるシャロンに接触し、共謀を持ちかけたことから思わぬ綻びを見せ始める。1,100万ドル(約16億円)の宝石をターゲットに、シャロンとの裏取引は成功したかのように見えたが、犯罪組織からの追跡や警察内部の陰謀、そしてルー刑事の執拗な捜査網にそれぞれの思惑が絡み合い、デーヴィスの完璧だった犯罪計画とルールが崩れていく―。

(公式サイトより抜粋)

渋い大人の映画

あの『ヒート』を彷彿とさせるなどと話題のクライム・サスペンス作品。『ヒート』ではロバート・デ・ニーロが演じる犯罪者を、アル・パチーノが演じる刑事が追うことになった。

『クライム101』でも、同じように「追う者」と「追われる者」が描かれることになる。追われる側はクリス・ヘムズワースで、追う側がマーク・ラファロだ。このふたりは『アベンジャーズ』のマイティ・ソーとハルクというわけで、その久しぶりの共演ということでも話題だ。マイティ・ソーとハルクがなぜ犬猿の仲だったのかは忘れたけれど、『マイティ・ソー バトルロイヤル』では、かなりバチバチにやり合っていた。本作ではそんなふたりの闘いが「一体、どうなるのか?」というところが見どころだろうか。

本作の感想を一言で記すとすれば、渋い大人の映画だったというところだろうか。何だかんだ140分という時間をハラハラドキドキさせてくれたわけで、絶賛とはいかなくても悪くはなかったという気はする。

原作者のドン・ウィンズロウのことは詳しく知らないけれど、“犯罪小説の巨匠”と呼ばれたりもするらしい。オリバー・ストーンが監督した『野蛮なやつら/SAVAGES』はイケイケでヤバいやつらの話だった気がするけれど、『クライム101』の主人公デーヴィス(クリス・ヘムズワース)はもっとクールで慎重だ。それだけに派手さには欠けるけれど、黒い衣装に身を固めたスタイルでとても渋い映画になっている。

© 2026 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

独自の美学

『クライム101』はタイトルに「犯罪」と謳っているわけで、犯罪者が登場することになる。デーヴィスという主人公は犯罪者ということになる。

それでもデーヴィスには美学=ルールがある。彼がターゲットにするのは盗んでも困らないような相手のみだ。劇中では高額な宝石を盗むことになるけれど、宝石商は高額商品には必ず保険をかけているから、盗まれても保険金が下りることになる。そして、彼は仕事中に人を傷つけないことをモットーにしている。さらには痕跡を一切残さないように気をつけているため、デーヴィスはこれまで警察に追われることもなく生きてきたのだ。

デーヴィスは犯罪者だけれど、独自の美学があって魅力的に映る。これは「任侠もの」と言われるような映画の登場人物に近いのかもしれない。ヤクザ稼業は真っ当な生き方ではないかもしれないけれど、「一宿一飯の恩義」みたいに筋が通っていれば、そこには何らかの美学があって、観客としても共感できる部分があるというわけだ。

加えて、本作ではデーヴィスのロマンスも描かれる。路上で車に追突された時には何らかの罠なのかとも思ったけれど、相手のマヤはごく普通の女性で、デーヴィスはマヤ(モニカ・バルバロ)に惹かれていく。デーヴィスは秘密があるからか、相手の目を見ることができず、とてもシャイなイメージでそんなところも観客としては親しみやすいのかもしれない。

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壊れた世界

デーヴィスは誰も傷つけることなく金を奪うことを信条としている。彼がなぜそんなふうに生きることになったのかはよくわからないけれど、生い立ちは貧乏で、かつてはホームレスだったこともあるようだ。彼は自分の目標とする金額まで稼いだら、別の生き方をしようと考えているのだ。

ちなみに原作は『壊れた世界の者たちよ』という中編集ということだが、本作で描かれる世界はどこか「壊れた世界」でもあるのだろう。本作は、アメリカ西海岸線を走るハイウェー〈101〉を舞台としているわけだが、その南端にはロサンゼルスがある。そこはハリウッドもある裕福な地域なのだと思うのだが、その傍にはホームレスもいたりする。そんなところがどこか壊れているという感覚なのだろう。

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それから本作は群像劇とも言え、デーヴィスだけに焦点が当たるわけではない。デーヴィスを追うことになるルー刑事(マーク・ラファロ)は、警察という社会の中で異端の存在だ。ルーは101号線の一連の犯罪を同一犯の仕業だと考えている。しかし、警察内部はルーの考えを好まない。同一犯ということになれば、警察の捜査が非難を浴びることになるからだ。ルーはほかにも警察内部の不正を目撃することになるわけで、正義を担うはずの警察という組織もどこか壊れているのだ。

そして、もうひとりの登場人物シャロン(ハル・ベリー)は保険会社の女性だ。シャロンは保険会社で長年働いてきたけれど、今になって不遇を感じている。保険会社は裕福な男性から保険契約を獲得するためのエサとして、若い女性を必要とする。シャロンもかつてはそんな存在だったのだが、53歳となった今ではすでにその役目を終えたと判断されている(これに関しては、ハル・ベリーが魅力的で説得力に欠けるけれど)。保険会社は女性社員に有能さなど求めておらず、結局女性は使い捨てされるようなシステムになっているのだ。そんなわけで3人は、どこか「壊れた世界」で生きているのだろう。

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カッコイイとは?

本作ではそんな3人が次第に近づいていくことになり、ルーはデーヴィスを追いつめていく。ところが本作には、もうひとり状況をかき回すようなオーモン(バリー・コーガン)という登場人物がいる。

オーモンはデーヴィスと組んでいたマネー(ニック・ノルティ)という男が、デーヴィスの後釜として用意した若造だ。ところがこのオーモンはデーヴィスとは違って、完全犯罪とはほど遠いやり方をする。ほとんど行き当たりばったりで痕跡を残しまくり、人を傷つけることも厭わない。本作はオーモンのせいで状況をかき回されることになるわけだが、ラストはオーモンのおかげで丸く収まることにもなる。

本作では、デーヴィスを筆頭に、美学=ルールを守ることが「カッコいい」こととされている。ところが、最終的にはみんなが美学を失っているようにも見えるのだ。

真っ当に生きてきたシャロンはデーヴィスに情報を渡すことで犯罪に加担することになるし、デーヴィスは最後に人を殺めることになる。真っ当に正義を貫いてきた刑事ルーも、デーヴィスを逃し、さらには高額な宝石を自らの懐に入れることになった。

さらに言えば、美学=ルールを無視することこそが信条だったはずのオーモンも、最後の最後で警察を殺すほどの覚悟がなかったことで、自らの信条を曲げることになり、それが彼の破滅につながることになったわけだ(バリー・コーガンのみっともなさ!)。

そんなわけでオーモンのおかげですべてが丸く収まってハッピーエンドという終わり方はスッキリするとも言えるけれど、同時にみんなが自らの美学を捨て去ることになったわけで、カッコよさは中途半端になってしまったようにも感じられた。

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