『WEAPONS/ウェポンズ』 アラレちゃん走りの向かうところ

外国映画

監督・脚本は『バーバリアン』ザック・クレッガー

主演として名前が挙がっているのは『DUNE/デューン 砂の惑星』ジョシュ・ブローリン

物語

これは、ある町で起きた、多くの人が命を落とした本当の話。水曜日の深夜2時17分。子どもたち17人が、ベッドから起き、階段を下りて、自らドアを開けたあと、暗闇の中へ走り出し姿を消した。消息を絶ったのは、ある学校の教室の生徒たちだけ。なぜ、彼らは同じ時刻に、忽然と消えたのか?いまどこにいるのか? 疑いをかけられた担任教師のジャスティン・ギャンディは、残された手がかりをもとに、集団失踪事件の真相に迫ろうとするが、この日を境に不可解な事件が多発、やがて町全体が狂い出していく…この話のヒミツ知りたいでしょう?

(公式サイトより抜粋)

アラレちゃん走り

ある夜、子どもたちが一斉に消えてしまう。防犯カメラの映像には、子どもたちが走り去る様子だけが残っている。この両腕を広げながらの走り方がとても印象的だ。

アラレちゃん走り”などとも呼ばれているようだ。この走り方の元祖がどこにあるのかは知らないけれど、子どもの頃に近所でそんな走り方をしていた子がいた。

もはやイメージでしかないのだけれど、いじめられっ子のその子は、泣きながら家に向かう時にそんな走り方をしていた気がする。やや前のめりの感じで、一刻も早く家に帰りたいという思いが、一直線に目的地へと向かうそんな走り方になっていたのかもしれない。

劇中ではある人物が子どもたちの走り方に注目して、事件の真相へとちょっとだけ近づくことになる。家を出た子どもたちはほぼ一直線にあるところへと向っているというのだ。

ところが『WEAPONS/ウェポンズ』そのものは、それとはまったく違う動きをする。真相へはなかなか接近できずに、その周囲を迂回していくように展開していくのだ。それでいてちょっとだけ予知夢的に禍々しい何かが顔を出したりして、観客の興味を煽り立てることになる。

©2025 Warner Bros. Entertainment. All Rights Reserved

集団失踪事件の顛末

ある町で起きた集団失踪事件。ある夜に突然、特定のクラスの子どもたちが17人も消えてしまったのだという。クラスで難を逃れたのはひとりだけ。

冒頭でそんなことがナレーションとして語られる。その子どもの声は誰の声なのかはハッキリしないけれど、事情を知っているということらしい。どうも町ではその事件をなかったことにしたらしい。何も解決できなかったことが恥ずかしかったからもみ消したということなのだ。一体、何が起きたのか?

全米で大ヒットした作品で、何かと噂にもなっていた『WEAPONS/ウェポンズ』。私は初日の最終回を観たけれど、久しぶりに満席の映画館での鑑賞となった(あまり規模の大きな劇場ではなかったけれど)。

観客の反応は悪くなかったし、ラストのあるシーンでは笑いが起きることになった。本作が最後まで観客の興味を惹きつけて離さなかったという証拠だったようにも思えた。とにかく存分に楽しませてもらった作品だったということは言える。

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巧みな語り口

本作は「考察ミステリー」などと宣伝されている。考察すべきものがあるのかどうかは私にはよくわからないけれど、とりあえずは「ネタバレ厳禁」ということ言えるかもしれない。

このネタは、ネタが割れてしまったら「元も子もない」というところはあるからだ。ネタが割れれば、すべての謎は解けたようにも見えるのだ。しかしながら、それでも評判が悪くないのは、語り口がうまいからだろう。

先ほども記したけれど、本作は児童失踪事件とは関係のないところから始まっていく。事件解決を目指す捜査員などが主人公となるわけではないのだ。そんなふうに事件の周囲を迂回していきつつ、次第に少しずつ真相が明らかになっていく。

ちなみにザック・クレッガーの前作『バーバリアン』も語り口が巧みだった。観客を巧みにミスリードしつつ、鮮やかに視点を変えることでさらに観客の興味を惹きつけていたのだ。

本作もそんなふうに語り口が見事だったから、ネタとしてはありふれているかもしれない題材をうまく見せることに成功している。

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視点が変われば

前作の『バーバリアン』から推測すれば、本作もホラー映画ということになるだろう。それは間違っていないし、確かにジャンプスケアやグロい描写も用意されている。とはいえ、全体的にはよくあるホラー映画とはちょっと違って、ジャンルの枠からはみ出しているような感覚がある。

ザック・クレッガー監督は『マグノリア』からの影響を認めているらしく、本作も群像劇となっている。いわゆる「ラショーモンアプローチ」の映画でもある。視点が変われば、別のものが見えてくることになるのだ。

最初はジャスティン(ジュリア・ガーナー)の視点から始まる。シャスティンは17人が失踪したクラスの担任だ。クラスで異常なことが起きたら、担任の先生に何かしらの責任を問うというのは当然だろう。保護者説明会でジャスティンは保護者から説明を求められるものの、保護者が納得するような回答をすることはできない。というのは、ジャスティンは何も関係ないからだろう。

ただし失踪した子どもたちの親はそんなことで済むわけもなく、ジャスティンは「夜道を歩く時は気を付けろ」などと脅されたりもする。そして、車には「魔女」という悪口を書かれることになり、怯えるようにして夜を過ごすことになる。

次の視点人物はアーチャー(ジョシュ・ブローリン)だ。彼は失踪した子どもの父親だ。実はジャスティンの車に「魔女」と書いたのはアーチャーかもしれない。とにかくアーチャーはジャスティンのことを疑っていて、保護者説明会でジャスティンを糾弾していたのもアーチャーだったのだ。

本作はそんなふうに視点をいくつも変えながら、事件の真相に少しずつ近づいていく。実は、ジャスティンの話はまったく事件の真相とは関係ない。ジャスティンが警官のポール(オールデン・エアエンライク)と浮気をし、その奥さんから罵倒されたりするエピソードなどは迂回でしかない。それでも迂回しながらも、ちょっとずつ真相に近づいていき、ラストは一気呵成に盛り上がることになる。そんな語り口が見事だったと思う。

終わり方は物悲しいところがあるけれど、因果応報というべきか黒幕には残酷な結末が用意されていて、そのあたりも『バーバリアン』と同様でスッキリとさせてくれるところがある。黒幕がなぜそんなことをしたのかという点は謎だったけれど……。

原題は「Weapons」で、これは劇中でもある兵器として示されることになる。そこはネタバレになるから伏せておくけれど、アーチャーが夢の中で見たライフル銃のような幻影は何だったのだろうか? あまりに直接的な表現だった気がするけれど、全米ではそのあたりへの考察が話題になったのだとか。

それにしても何が怖いって、ベネディクト・ウォンのアラレちゃん走りが一番怖かった気がする。

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