監督はフランシス・ガルッピ。本作が長編デビュー作とのこと。
原題は「The Last Stop in Yuma County」。
物語
砂漠のダイナーに閉じ込められたのは、銀行強盗とクセありの客たち
何も起きないわけがなく…
1970 年代、ユマ郡の砂漠地帯。最後の給油所であるダイナーの戸をセールスマンが叩いた。定刻になっても給油車が来ないのだ。セールスマンはウェイトレスと話しながら時間を潰す。 そこに現れたのは、凶悪な銀行強盗。
セールスマンとウェイトレスは人質となってしまう。だがガソリンがないので銀行強盗もダイナーから出られない。そんな状況も知らずに次々とクセありの面々がダイナーを訪れる。老夫婦、インディアンのチーフ、頼りない保安官、そして犯罪者を目指すカップル…。はたしてセールスマンとウェイトレスは無事に生還できるのか!?
(公式サイトより抜粋)
給油か死か
都内にいると車なんかなくとも特に不便を感じることもないけれど、地元に戻れば車がなければほとんどどこに行くこともできない。日本の田舎ですらそんな状況なわけで、広大な土地を持つアメリカならなおさらということになる。
車がないことは「移動手段がない」というだけではなく、命に関わる場合もあるのだ。何もない砂漠地帯を走り抜ける時などはガス欠になればヘタしたら死に至る可能性があるわけで、そういう場所には「The Last Stop(最後の給油所)」という看板が出ているのだという。そこで給油しなければ、その先にしばらく給油所はなく、つまりそれは死を意味することになるというわけだ。
『ユマカウンティの行き止まり』の舞台は、「ユマ郡の最後の給油所(The Last Stop in Yuma County)」ということになる(その先の給油所は100マイル先なのだとか)。邦題が「行き止まり」ということを謳っているのは、そこから先には行けないということを強調したいがためだろう。
というのも、その給油所にはガソリンがないからだ。給油所の黒人店主は給油車がちょっと遅れているだけと判断し、客には隣のダイナーで待つように促している。しかしながら、映画を観ている観客は、それが無駄であることを知っている。すでに給油車が途中で事故を起こし横転していることが示されているからだ。結局、そこを訪れた客はどこにも行けず、そこで足止めを喰らうことになるのだ。

© 2024 The Last Stop in Yuma County LLC.
ダイナーと強盗と給油待ちの客
主人公は日本製のナイフのセールスマン(ジム・カミングス)で、娘の誕生日のために砂漠を抜けなければならない。彼はしがないセールスマンだが観察力があるのか、ダイナーにやってきた二人組の銀行強盗に気づいてしまう。
セールスマンはその情報をダイナーのウェイトレス(ジョスリン・ドナヒュー)と共有し、助けを呼ぼうとするものの、目ざとい強盗・兄(リチャード・ブレイク)がそれを阻止することになる。
強盗たちは二人を脅して、何事もなかったことを装わせ、その間にほかの給油待ちの客も増えていく。途中で警官がやってきたりはするものの、間抜けな新人警官はダイナーの異常事態に気づくこともなく去っていく。
そんな緊迫した状況は、ネイティブ・アメリカンのチーフがガソリン満タンでダイナーに食事に来たことで一気に変化する。強盗たちは彼の車を奪うことにしたのだ。そして、彼らは意を決してダイナーを占拠しようとするのだが……。
※以下、ネタバレもあり!

© 2024 The Last Stop in Yuma County LLC.
ベタだけれど楽しめる
何と言うか、ベタと言えばベタだけれど、楽しめる作品になっているのは間違いない。静かに少しずつサスペンスを盛り上げつつ、平和なダイナーがたちまち修羅場と化す場面への移行が決まっていた。ジュークボックスのロイ・オービソンの曲に合わせ、スローモーションで強盗の行動を追っていくところがカッコいいのだ。
フランシス・ガルッピという新人監督は、まだ長編第1作にもかかわらずその手腕が認められ、次はサム・ライミの『死霊のはらわた』の新作が決まっているのだとか。
ちなみに本作はなぜか新・文芸座でやっていた。文芸座というのは老舗の名画座だが、名画座だけでやっていくのは厳しいということなのか、たまにロードショー作品も上映することにしたらしい。
そして、本作の上映後にはトークショーが開催された。『映画秘宝』などに執筆をしていた映画ライターの2人らしい。トークショーでは本作の細かなネタなどに関しての説明があり、色々と参考になった。
本作では、強盗たちがダイナーを占拠するためにウェイトレスを人質にして彼女に銃を突きつけたものの、なぜか客たちも主人公以外は全員が銃を持っていて、逆に強盗のほうも銃を突き付けられることになってしまう。
強盗・弟のほうは「みんな銃を持ってるじゃないか」とビビってしまうわけで、ちょっと笑えるのだ。銃を持っているのは自分たちばかりだと推測していた強盗たちは、老夫婦からも銃口を向けられ、たちまちいわゆる「メキシカン・スタンドオフ」という状況になる。たとえばタランティーノが『レザボア・ドッグス』なんかでもやっていた、互いが相手に銃を突き付けるような状況だ。
この場面に関してもトークショーで詳しい説明があった。アメリカのこの地域では銃の携行が許されていて、誰でも銃を持ち歩いているらしい。「コンシールド・キャリー」というもので、銃を構えて歩いていたらマズいけれど、ホルスターとか鞄などに入れて持ち歩くことは許可されているということらしい。だから強盗・弟がズボンの後ろに銃を突っ込んでいても特に問題にはならないということになる。
しかしながらそんな状況に陥れば、誰もが引っ込みがつなかくなってしまうわけで、やはり予想通りのことが起きることになる。
銃を持ってなかったセールスマンはたまたまその修羅場は回避することになるけれど、現場には大量の現金があり、目撃者は誰もいないということになると、良からぬ欲望が首をもたげてくる。ラストシーンはトークショーでも触れられていたけれど、キューブリックの『現金に体を張れ』のラストを思わせるものになっている。
上記では、仮に強盗・兄(本当の兄弟ではないけれど)と記したキャラを演じたリチャード・ブレイクが本作の雰囲気を決定づけていた。リチャード・ブレイクは『バットマン・ビギンズ』でバットマンの両親を殺す悪役を演じていた強面で、静かに話すだけでその場を支配するような空気を醸し出しているのだ。




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