『サンダーボルツ*』 イケ散らかしてる?

外国映画

監督は『素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー』ジェイク・シュライアー

主演は『ドント・ウォーリー・ダーリン』フローレンス・ピュー

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第34作。

イントロダクション

サンダーボルツ*よ、集結せよ!アベンジャーズに代わって世界を救え!人類消滅の危機に集められたのは、〈超クセ強な無法者たち〉。「最強でも、ヒーローでもない――でも、やるしかない!」世間から見放された奴らの人生逆転をかけた敗者復活戦!型破りなマーベルの新チーム誕生を見届けろ!

(公式サイトより抜粋)

久しぶりのMCU

DCコミックスの悪者たちが集合した『スーサイド・スクワッド』という作品もあったけれど、本作はそのマーベル・コミック版ということらしい。『スーサイド・スクワッド』の場合は、もっといかにも“悪役”然としているキャラが多かったような気もするけれど、『サンダーボルツ*』の場合はそれほど悪い感じはしない。ただ、アベンジャーズの一員になるにはちょっと問題がありそうな連中が揃っているということらしい。

個人的にはMCUは久しぶりの参戦ということで、バッキー(セバスチャン・スタン)がなぜ議員になっているのかとか、よくわからないこともあった。それからゴースト(ハナ・ジョン=カーメン)やタスクマスター(オルガ・キュリレンコ)に関しては、一度は観ていたはずだけれど、まったく記憶になかった(それぞれ過去のMCU作品に顔を出していたキャラだったことは、鑑賞後に改めて確認した)。そんなわけでかなり穴だらけではあるけれど、それでも十分に楽しめる作品になっていた。

ちなみに本作のタイトルには「*(アスタリスク)」がくっ付いている。これは「一体、何なのか?」と言うことになる。「仮のタイトル」として「サンダーボルツ」と名付けられたとも言われているようだし、一部のポスターではこの印は注釈を示すものにもなっている。そして、そのポスターには、下のほうに小さく「*アベンジャーズは来ません(*THE AVENGERS ARE NOT AVAILABLE)」と書かれているのだとか。つまりはアベンジャーズ不在の世界で、誰が地球を守るのかということになるわけだ。

彼(女)らのチーム名は一応「サンダーボルツ」と名付けられる。これは主人公的な位置にいるエレーナ(フローレンス・ピュー)が子ども時代に所属していたサッカーチームの名前だ。このチームは結局一度も勝てなかったらしく、本作のサンダーボルツもそんな負け犬たちのチームとなっているのだ。

©2024 MARVEL

イケ散らかしてる?

サンダーボルツが実際に負け犬なのかはともかくとして、確かにヒーローっぽくはない。主人公格のエレーナはヒーローというよりは、汚い仕事ばかりをやっていて、それにうんざりしているらしい。エレーナは最初から自暴自棄気味で、ビルから飛び降りる冒頭シーンも自殺を思わせなくもないのだ。

サンダーボルツの面々が集結するのは、ある保管庫に意図的に集められたからだ。彼らを集めたのは、彼らの雇い主であるヴァレンティーナ(ジュリア・ルイス=ドレイファス)だ。実はヴァレンティーナはバッキーを含む議員たちに目を付けられていて、裏の仕事を依頼していたことがバレたらマズいため、その証拠であるエレーナたちサンダーボルツの面々を殺そうと画策していたというわけだ。マズい証拠をシュレッダーにかけるように、サンダーボルツはまとめて殺されそうになるのだ。

彼らは誰も空を飛んだり、目からビームが出てきたりもしない。しかも正義感に燃えているというわけでもなさそうだ。それでもやむにやまれぬ事情でヒーローの真似事みたいなことをやらなければならない状況に追い込まれ、イヤイヤながらもみんなと協力せざるを得なくなっていくのだ。

まずはチームのまとめ役となるバッキーが“イケ散らかして”いる。アクションシーンは多くはないけれど、エレーナたちの窮地にバイクで颯爽と現れて、あっという間に敵を蹴散らす場面は本作で一番気持ちが上がるところだろう。

それからサンダーボルツに勝手に加わることになるレッド・ガーディアンことアレクセイがいい味を出している。アレクセイを演じるのは、Netflixドラマの『ストレンジャー・シングス』シリーズでもお馴染みのデヴィッド・ハーバーだ。

アレクセイは勝手に初代キャプテン・アメリカをライバル視しているウザいおじさんなのだけれど、彼は騒がしいだけの盛り上げ役みたいなキャラとなっている。それでもアレクセイがひとりの女の子を助けたことが、一般市民からちょっとだけ喝采を浴びることになる。

アベンジャーズは誰もが知っている存在だったけれど、サンダーボルツは誰にも知られていない。エレーナとアレクセイがそれなりに派手な格好で街中に居ても、誰も気にも留めないところがアベンジャーズとの歴然とした差だろう。ただ、その分、身近な感じがするとは言えるかもしれない。

一度はキャプテン・アメリカに任命されたものの、失敗して醜態を晒すことになったジョン・ウォーカー(ワイアット・ラッセル)なんかも、闇の部分があったり、弱さがあるところにかえって親しみを感じさせるところがある気もする。

©2024 MARVEL

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悪意のあるスーパーマン?

『サンダーボルツ*』において、悪役となるのはボブ(ルイス・プルマン)という男だ。彼はヴァレンティーナがやっていたある実験の被験者で、実はほぼスーパーマンみたいな能力の持ち主だったのだ。

『スパイダーマン』では「大いなる力には、大いなる責任が伴う」と言われていたけれど、スーパーマンみたいな大いなる力を持つ存在が、悪意を持つ存在だったとしたらとんでもないことになる。

それはすでにMCUでも意識されていたはずだ。超人血清を打たれる人間は、初代キャプテン・アメリカになったスティーブ・ロジャースのような“全き正義漢”でなければならない。そうでない場合はロクなことにならないだろう。それを極端にした場合、ドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』のホームランダーみたいにかなり厄介な存在になってしまう。

ボブというキャラもそれに近いところがある。ボブは一度はセントリーというキャラとしてサンダーボルツの面々の前に立ちはだかることになるのだが、そこから闇落ちしてヴォイドという存在となってしまう(“全き黒”といった感じのビジュアルもいい)。セントリーは光の存在であり、ヴォイドは闇の存在ということなのだろう。

本作ではヴォイドとの闘いが、精神世界での闘いのように描かれる。これはあまりエンタメとしてよく出来ていたとは思えないけれど、同じく闇落ちしかかっていたエレーナが、ボブを助けることで彼女自身も救われた形になっているということなのだろう。

最後に「サンダーボルツ」改め「ニュー・アベンジャーズ」として紹介されるところもちょっとだけ胸熱だった。ただ、どうも一部では“偽物”扱いされているようで、ここにはスルーしてしまった『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の話が関わってくるらしい。

一度は『アベンジャーズ/エンドゲーム』で大きな山場を迎えたMCU。しかしながら、その山を乗り切っても、「映画は続けなければならない」というわけで、先の山場がかなり盛り上がっただけに、その後が苦しい展開になっているというのが、最近のMCUの状況なのだろう。本作はまずまずな評判のようだし、ちょっとだけ盛り返したのかもしれない。次の山場として再び「アベンジャーズ」の名前を冠した作品が待っているようだし、ちょっとだけ楽しみになってきた。

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