監督は『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のリドリー・スコット。
主演は『フランケンシュタイン』のジェイコブ・エロルディ。
原題は「The Dog Stars」。
物語
謎のパンデミックで人類の大半が死滅、生存者たちが奪い合い殺し合う狂気の世界。 パイロットのヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と共同戦線を張ることで日々を生き延びていた。 ヒッグの理性をつなぎとめていたのは、愛犬ジャスパーの存在と亡き妻の記憶だけだった。 そんなある日、小型機の無線に“謎の声”が届く。 失われた日常を求め、その声に導かれるようにヒッグは未知の空へと飛び立つ。
(公式サイトより抜粋)
荒廃した世界を生き抜くには
リドリー・スコットの最新作だ。もう90歳近くになっているというのにまだまだ元気ということらしい。『ラスト・サバイバー』は荒廃した世界を舞台にしたエンタメとして、なかなか楽しめる作品になっている。
世界は謎のパンデミックで終末世界のような様相を呈している。生き残った人たちは少なくなった資源を奪い合う形になり、世界全体が無法地帯になるということは、これまでの終末世界を描いた映画と同様だ。
主人公のヒッグ(ジェイコブ・エロルディ)は元軍人のバングリー(ジョシュ・ブローリン)と共同戦線を張っている。バングリーは射撃の腕前が超一流で、ヒッグは元整備工だと語っていたけれど飛行機に乗れる。そんな二人の能力があるからこそ、危険極まりない無法地帯でも何とか生き延びてこられたということなのだろう。
この世界では常に周囲に注意を払わなければ危険だ。バングリーの土地は元飛行場ということなのか滑走路もあり、視界が開けていて敵の侵入に備えやすい。そして住居として使っている建物の傍には見張り塔が立っている。そこから常に周囲を見張っていなければ自分たちの身にも危険が及ぶのだ。
その土地に近づく者もいるけれど銃を持っていたりすれば、あっという間に銃弾の餌食になる。生き残った者たちはそんなふうにしていなければ生きていけないのだ。

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ここではないどこか
バングリーは元軍人でこの世界をサバイブすることを使命として考えているところがある。一方でヒッグは未だに亡くなった奥さんのことを思っていて、今でも打ち捨てられた我が家に戻って奥さんを懐かしんだりしている。
ヒッグの唯一の拠り所は、その奥さんと一緒に飼っていたジャスパーという愛犬だろう。ヒッグとジャスパーはいつも一緒で、ヒッグはジャスパーがいたからこそ生きていけたというところがあるのだろう。
ところがそんなジャスパーはその土地に入り込んできた暴徒に殺されてしまうことになる。それがきっかけとなってヒッグはバングリーと離れて、別の土地を目指すことになるのだ。
というのも、セスナ機の中で無線を使っていると、グランドジャンクションという場所から謎の声を聞くことがあったからだ。ヒッグはそこには希望があると信じて飛び立つことになるのだが……。
既視感は否めない?
ヒッグはセスナ機で飛び立つものの、運悪く機器の故障によって不時着を余儀なくされる。そこでたまたま出会ったのが、シーマ(マーガレット・クアリー)という若い女性とその父親ジャック(ガイ・ピアース)だ。その土地の状況も似たようなもので、ジャックたちもやはり見張り塔を立てて、周囲を警戒しながら何とか生き延びている。
ヒッグとシーマはまだ若いけれど、共に結婚相手と死別している。『ラスト・サバイバー』はそんな二人のほのかなロマンスもちょっとだけ描かれたりもする。エンターテインメント作品としては、ロマンスも欠かせないということかもしれない。
そんなわけでエンターテインメント作品としては決して悪くはなかったのだけれど、如何せんあちこちで既視感は否めない気もした。荒廃した世界で主人公が犬を相棒にして独りで歩き回るというあたりは『アイ・アム・レジェンド』そっくりだったし、その後にバングリーが襲われるスキンヘッドの集団は『アイ・アム・レジェンド』に登場するゾンビみたいだったし、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の白塗り集団とも似ている。
それからシーマたちの土地を襲う集団は馬に乗っていてインディアン風でもあった。このシークエンスでは襲撃を逃れ、命からがらセスナ機で飛び立つことになるわけだけれど、ここはまるごと西部劇風の活劇となっている。
さらに無線の声が実は罠だったという話はどこかで観たような気もするし、新鮮味というものに欠けるのは否めないのだ。終末世界にゾンビがいて西部劇もあってということで楽しめることは間違いないけれど、それほど驚きというものはなかったかもしれない。
尤も、これは本作がリドリー・スコットの作品ということもあって期待が大きすぎたということもあるだろう。リドリー作品でなければエンタメとしてそれほど悪くはないのだ。ただ、リドリーの近年の充実したラインナップと比べてしまうと分が悪いということだろう。

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「The Dog Stars」とは?
グランドジャンクションという場所は、最初は希望がある場所に見えたけれど、実はとんでもないところだった。結局はもはやこの世界にはユートピアは存在しないということらしい。
ラストではバングリーがモルモン教徒と呼ぶ人たちと暮らす場面が丁寧に描かれる。何気ないシーンではあるけれど、数々の無法地帯をくぐり抜けた後では非常に稀な光景にも見える。
原題は「The Dog Stars」というもので、これは「おおいぬ座」のことを指すらしい。「おおいぬ座」の近くには「オリオン座」がある。ギリシャ神話では、オリオンという狩人が従えていた忠実な愛犬がいて、その狩人と猟犬の姿が星座になったということになっている。
劇中のヒッグは「おおいぬ座」のことを、愛犬ジャスパーが亡くなった後には「ジャスパー座」みたいな言い方をしていた。そして隣にある「オリオン座」のことを、なぜか「エルヴィス座」みたいに呼んでいた。ちなみにヒッグを演じたジェイコブ・エロルディは、『プリシラ』でエルヴィスを演じていたわけで、妙なところでつながっている。
邦題がそんな原題とはまったく関係ない「ラスト・サバイバー」というものになっているのは、終末世界ということを強調したかったからかもしれないし、かつての日本映画に『DOG STAR/ドッグ・スター』という作品があったからかもしれない。
『DOG STAR』は2002年の瀬々敬久監督作品で、豊川悦司が犬の生まれ変わりになるというファンタジー作品だった。豊川が犬みたいになってしまうという小品で、まだ若い感じの豊川が妙にかわいらしく見える。『地面師たち』の怖い豊川には震えあがったけれど……。




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