『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』 トムじゃなきゃ

外国映画

トム・クルーズのライフワークとも言える『ミッション:インポッシブル』シリーズの第8弾にして最終作。

監督・脚本は『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』クリストファー・マッカリー

原題は「Mission: Impossible – The Final Reckoning」。劇中では「ファイナル・レコニング」は、「最後の試練」などと訳されている。

一応の公開日は5月23日となっているのだが、どこでも先行上映をやっているため、ほとんどすでに上映中と同様になっている。

長尺をものともしない……

前作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』を受けての続編、かつシリーズの最終作だ。

前半部は前作を受けて、本作がどんな状況にあるかという説明で、ちょっともたついた感もあったけれど、やはり最終的には見せ場の連続で、最後まで楽しませてくれる作品になっていたと思う。上映時間はシリーズ最長の169分という長尺だったけれど、それをあまり感じさせないエンターテインメント作品になっていたんじゃないだろうか。

本作の状況を簡単に説明すれば、人工知能のエンティティによって世界各国の核兵器が乗っ取られようとしているということになる。エンティティはすべての核兵器を掌握した段階で、攻撃に移ろうとしているらしい。それからエンティティを操ろうと考えているガブリエル(イーサイ・モラレス)の存在もあり、彼もしつこく絡んでくる。

イーサン(トム・クルーズ)たちはエンティティとガブリエルたちの両方を相手にし、世界の終末の危機を回避させなければならないのだ。やるべきことは二つある。前作で深海に沈んだ原子力潜水艦からある物を取ってこなければならないのと、それを使ってエンティティをうまく「アラジンの魔法のランプ」のようなデバイスへと閉じ込めてしまわなければならないのだ(これをしっかりと説明しようとすると長くなってしまうということなのだろう)。

このミッションが成功しなければ、世界は核戦争で壊滅的な状況に陥り、人類はほとんど全滅ということになりかねないというわけだ。それを回避するため、イーサンたちは不可能と思われるミッションに挑むことになる。

©2024 PARAMOUNT PICTURES.

シリーズの集大成として

『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』は、シリーズの集大成として、過去作品が少しずつ引用されている。イーサンがやってきたことが、本作につながっていることが強調されているのだ。

たとえば、第1作『ミッション:インポッシブル』で、イーサンの上司だったジム・フェルプス(ジョン・ヴォイト)の息子が、実は前作からずっとイーサンを追っているジャスパー(シェー・ウィガム)だと明らかにされる。それから同じく第1作でイーサンにまんまとやられた脇役のダンロー(ロルフ・サクソン)が復活し、本作では協力者になったりもする。また、第3作『M:i:III』で登場したラビットフットが、本作のエンティティにつながるアイテムだったことも判明する。

そんなふうに過去作とのつながりを意識させているのは、イーサンがやった選択と関わってくるからだろう。イーサンは前作でイルサ(レベッカ・ファーガソン)という犠牲を払うことになった。それによってガブリエルはイーサンのやることを否定していたはずだ。イーサンと関わることで、多くの人が死んでいくというのだ。

確かに今回も第1作からの皆勤賞というルーサー(ヴィング・レイムス)までもが、ミッション中に犠牲になってしまうことになる。ガブリエルが策を弄してルーサーをハメたからだ。

ただ、イーサンたちがやっていることは世界を救うためであり、イーサンが組織の命令を無視しても突っ走ることになるのは、イーサンたちのやり方しか方法がなかったからだろう。

本作では過去にやってきたことも振り返られ、今回のミッションで不可能なことを成し遂げれば、イーサンがしてきた選択は決して間違いではなかったと証明することになるのだ。すべては定められているのではなくて、選択によって運命は切り拓かれる。そういったことを言わんとしているのだ。

そして、それについては、すべてが終わった後に聞くことになる、ルーサーの遺言のような言葉が改めて示してくれるだろう。

©2024 PARAMOUNT PICTURES.

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陸海空を駆け巡り

イーサンのやってることはどんどん過激になっていく。以前から自殺行為みたいなことはやっていたけれど、今回も毒を食らって死にかけたり、深海からほとんど素潜りみたいな形で浮上して、低体温症で仮死状態になったりもする。その死にかけのイーサンを待ち構えていたグレース(ヘイリー・アトウェル)によって何とか蘇生されることになるけれど、そもそもの計画自体が無茶ばかりなのだ。

深海で転がっていく潜水艦から脱出を図る場面は、『ポセイドン・アドベンチャー』あたりを思わせるシークエンスになっていて、静かながらも緊迫感があった。そして、極めつけが最後の飛行機でのアクションだろう。これまでのシリーズでも何度も空中戦はあったけれど、本作がまさに最高峰のアクションになっていたと思う。

トム・クルーズは例によってアクションを自分でやっているわけで、飛行機に吊るされたり、ほとんど曲芸みたいなことまでしている。上空でガブリエルと闘うアクションも、実際に飛行機を飛ばしてやっているのだろう。たとえ命綱があったとしても、マトモな人なら尻込みするのが普通だと思うけれど、トムは平気らしい。

実際に飛行機を飛ばしているのは、その風の強さで明らかになっている。頬も風圧でブルブル震えることになるし、髪はまるでマッシュルームカットみたいな妙な形に変形してしまう。ハラハラの中にちょっとだけユーモアを交えたわけではないのだろうけれど、ついつい笑ってしまった(ジャッキー・チェンならもっと笑わせようとするところだが)。

このラストの飛行機のシークエンスは、まさに手に汗握るという印象だった。このシークエンスの間中、私もハラハラしながら観ていたけれど、後ろの席の人も同様だったようで、その誰かは緊張のあまりか極度に足を突っ張り、前の席にずっと強く押し付けながら観ていたらしい。観ている側をそんなふうに夢中にさせてしまうシークエンスだという証拠かもしれない。

©2024 PARAMOUNT PICTURES.

トムじゃなきゃダメ

本作は本当に最終作なんだろうか? トム・クルーズがメインを張るのは最後ということかもしれない。もしかすると007シリーズのように主演を変えて続けるとか、あるいはトムが脇役に退いて別の主役を立てるとかで続ける方法もあるのかもしれない。かといっても、それはなかなか難しいのかもしれない。

本作の主人公イーサンは、彼でなければできないことを持っていた。IMFとしてもアメリカとしても、イーサンに命令に従わないなどの問題があったとしても、ミッションを成功させることができる者はほかにはいなかったのだ。だからこそ最終的にはイーサンがミッションに抜擢された形になっていた。イーサンじゃなきゃダメだったのだ。それと同じで、このシリーズの主役をトム・クルーズ以外のほかの人に任せることはなかなか難しい気がする。やはりトムじゃなきゃダメなのだ。

『ミッション:インポッシブル』シリーズは、かつては『スパイ大作戦』というテレビシリーズだった。それをトムがプロデュースして、アクション映画シリーズとして生まれ変わった。もちろんあの有名なテーマ曲や、司令を出す録音機が5秒後に消滅するというネタなどは、元々のテレビシリーズからいただいたものだ(私もどこかでそれを見ていたのか、何となく覚えていた)。

しかしながらテレビシリーズは映画のような派手なアクションがあったとは思えないわけで、まったく新しいシリーズとして生まれ変わったということなのだろう。アクションがシリーズを追うごとに凄さを増していったことが、このシリーズをこれほどまでの人気シリーズに成長させていった気がする。それもトム・クルーズの弛まぬ努力と、ファンサービスに徹する精神の致すところなのだろうと思う。

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