原作は『近畿地方のある場所について』の背筋の同名小説。
監督は『呪怨』シリーズ、『ホムンクルス』などの清水崇。
主演は『ミーツ・ザ・ワールド』の板垣李光人。
あらすじ
「あの夜、何があったかお話ししますね」
心霊スポットとして有名な墓地の呪われた木についての噂を聞き、肝試しに出かけたある大学生たち。
しかし、翌日グループの一人が行方不明になってしまった。
その日を境に、彼らの身の回りに不可解なことが起きるようになり、次第に何かによって追い詰められていく…。
果たしてあの日、何が起きたのか?
あの日にまつわる証言に導かれて明らかになる、<おそろしい結末>とは――。
(公式サイトより抜粋)
アンケートとはどういうこと?
一応はジャンルとしてはホラー映画ということになるのだろう。それでも、なぜかタイトルはホラー映画らしからぬ『口に関するアンケート』となっている。そして、映画の始めには、「最後にアンケートがありますのでご協力をお願いします」という注意書きが示される。「どういうこと?」と思うけれど、実際に映画が終わるとアンケートらしき質問がいくつか提示されることになるのだ。
これがクイズならば質問に対する正解は決まっているけれど、アンケートというわけだ。質問に対する答えは人それぞれで、どんなふうに回答しても間違いということはない。ある人はAのように感じたけれど、別の人はBのように感じた。あるいは、ある人の意見はこうだけれど、別の人はその正反対ということだってあるかもしれない。
そういった意見や感想を調べるためにあるのがアンケートというものであって、正解が求められているわけではないというわけだ。「口に関するアンケート」とはどういうことなのだろうか?

ⓒ2026映画「口に関するアンケート」製作委員会
何を見ていたのか?
まずは翔太(板垣李光人)、竜也(綱啓永)、杏(吉川愛)、美玲(MOMONA)という4人の大学生グループの肝試しが描かれる。このエピソードでは杏という女の子が呪いの木に呪われてしまい、その後、失踪してしまうことになる。
それから話は変わり、堀田(森愁斗)と川瀬(西山智樹)という別の2人組の肝試しのエピソードになるのだが、そこで呪いの木の傍で狂ったような姿で見つかるのが杏だったのだ。
その後、視点が変わり、刑事・草壁(中村獅童)が登場する。彼は肝試しに参加していた若者たちの証言の録音データを聞いている。草壁は杏の失踪について調べているらしいのだ。
草壁はギャンブル依存症で、借金を抱えている。だから草壁はひとりで勝手にその事件を調べ、その情報を週刊誌に売りつけようとしている。そうした草壁の調査によって、これまで観客が見ていたものがひっくり返ることになるのだ。
実は4人組と2人組のエピソードは順番が異なっている。4人組のひとりである杏が失踪し、その後に2人組の肝試しで呪われて狂ってしまった杏が発見される。そんなふうに観客は理解していたわけだが、実は2人組の片割れである川瀬から、4人組の翔太に呪いの木の噂が伝えられたことが明らかになるのだ。
順番が逆で、2人組のエピソードが先にあり、その後に4人組のエピソードという順が正しいということになる。
そうなってくると2人組が見ていた「杏は何者?」ということになる。失踪した杏とは別の人ということになる。これだけでも謎なのだが、その後に草壁がコンビニの防犯カメラを調べると、実は4人組だったはずのグループは3人しかおらず、杏の姿がないことが発覚する。実はもともと杏は居なかったらしいのだ。これは一体どういうことなのか?

ⓒ2026映画「口に関するアンケート」製作委員会
口は災いの元
謎解きはともかくとして、証言のシーンばかりが続くのでかなり単調で、89分という時間が酷く長く感じられた。というのも、かなりのクローズアップばかりが連続するからだろう(最初が翔太の口の極端なアップから始まるのは、口というものが重要な要素になっているから)。
もちろんこのクローズアップには意図がある。若者たちの証言が警察に対するものと思わせるために、周囲を見せないようにしていたわけだ。実はそれがミスリードであることが明らかになるわけだけれど、単純にアップばかりが続くためにだんだん辛くなってくるのだ。
それからホラー映画だから怖いかと言うと、そんなに怖くもない(呪われた杏の風貌は結局貞子みたいだった)。背筋がゾクゾクするような感覚はなかった。観客を怖がらせるというよりはミステリーといった趣きなのだ。
しかしながら、もしもミステリーならば謎解きがありそうなものだけれど、本作はそこも放棄しているようにも感じられる。そもそも杏が居なかったということにどんなふうに整合性を持たせるのだろうか。木の呪いということですべてが解決するわけではないと思うのだけれど、本作はそのあたりに対する謎は残ったままなのだ。
そして、終わりにはアンケートが待っている。しかしながらこれはアンケートとは名ばかりで、劇中の謎に対するヒントめいたものが与えられることになっている。たとえば「杏は何者だと思いますか?」という質問に対しては、いくつかの選択肢というヒントが与えられる。これによって観客は自分なりの考察を促されることになるというわけだ。

ⓒ2026映画「口に関するアンケート」製作委員会
本作はそんなふうに謎に対する考察というものを前提に作られている。観た人が好き勝手な言葉を撒き散らすことで、本作に新たな意味が付与されることになるのだ。
劇中の呪いの木はかつては人々の願いを叶えるとされる神木だった。ところがある女性がそこで首吊り自殺をし、それから人々のその木に対する見方が変化したらしい。
週刊誌記者の西(柄本時生)は、こんな解説をしていた。その辺の石ころは人々から蹴られたりする他愛ない存在だけれど、その石がお地蔵様の形になると人々の見方は一変する。それと同じで人々から慕われる神木も、何かのきっかけで呪いの木と見られることになってしまう。
そこに介在しているのが誰かの無責任なデマということになる。しかしそれが広がっていくと、いつの間にかにそれが真実のようになってしまう。人の噂というものが実際には根も葉もないもので、そういう嘘が信じられるようになってしまうということはあるだろう。
本作ではそれを映画を観た人の感想や考察と結び付けようとしている。神木を呪いの木にしてしまうような人の口の力が、映画を観た人の口にもあると考えているのだ。
アンケートの最後の質問は、この映画についてだったか、この事件についてだったか、それについて「人に語りたいと思いますか?」というものだった。観客の口も呪いに加担しているかのような言いっぷりなのだ。
これはちょっと強引過ぎる気がする。映画を観た人の感想は根も葉もないものではないわけで、神木を呪いの木に変えてしまうほどの力はないんじゃないだろうか。
さらに加えておけば、人の口の力が物事の見方を変えるのだとすれば、呪いというものの実在はもっと曖昧にしても良かったんじゃないだろうか。本作はどう見ても呪いが実在しているように見えてしまう。呪いが実在しているとすれば、人の口の力が果たす役割なんてたいしたものとは思えないわけで、どこかチグハグな感じがしてしまったのだ。
そんなわけで「考察にはあまり意味はない」みたいなことを書いたけれど、誰かがX(旧Twitter)につぶやいていた解釈は面白かった。なぜ本作ではセミが出てくるのかが謎だったけれど、セミを英語で言うと、呪いの木のやっていることがよくわかると言うのだ。深いわけではないけれど、とりあえず「なるほど」となってスッキリする。





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