監督は『アリー/スター誕生』のブラッドリー・クーパー。本作は監督としての第3作。
主演は『俺たちフィギュアスケーター』のウィル・アーネット。
原題は「Is This Thing On?」。
物語
二人の子供にも恵まれ、順調なはずだった夫婦、アレックスとテス。中年にさしかかり、置き去りにしてきたそれぞれの夢が二人の結婚生活を終わりに向かわせる。失意の中、ニューヨークの街でふと足を運んだコメディクラブで偶然舞台に立つアレックス。夫婦の赤裸々な関係を“笑い”に変えながら、新しい生きがいを見つけていくアレックス。その先にあった思いがけない人生とは…。
(公式サイトより抜粋)
スタンダップコメディって何?
『ジョーカー』の主人公アーサーは、笑いの才能が一切ないにもかかわらずなぜかスタンダップコメディをやっていた。日本なら客の前で漫談をするのはプロの芸人ということになるけれど、どうやらアメリカの文化ではちょっと違うらしい。
『これって生きてる?』の主人公アレックス(ウィル・アーネット)は離婚の危機にあり、そのもやもやしたものを吐き出す場所としてスタンダップコメディを始めることになるのだ。劇中でもセラピーという言い方をされていたけれど、たとえば精神科医にかかって愚痴をぶちまけるのと同じで、客に向けて自分の離婚話をすることがセラピーと同様の効果をもたらすことになるというわけだ。
もちろんスタンダップコメディで稼いでいるプロもいるのだろう。その一方で「オープンマイク」という枠があって、当人が望めば名前をリストに書くだけで客の前に立てるシステムがあるのだ(『ジョーカー』のアーサーが出ていたのはこっちの枠なのだろう)。客は金を払って酒を飲みながらそんな人たちのバカ話を聞くことになるし、マイクを握る側も金はもらえなくても楽しみとしてそれをやっているのだ。日本の芸人がやる漫談とはちょっと違った文化がアメリカにはあるらしいのだ。本作はそんなスタンダップコメディが題材となっている。
ちなみに原題の「Is This Thing On?」は、直訳すれば「電源入ってる?」ということ。スタンダップコメディをやる時のステージ上での決まり文句みたいなものらしい。邦題では「これって生きてる?」と意訳されていて、それが離婚危機にあるアレックスの気持ちを指しているように感じられなくもないのだ。

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離婚危機というネタ
アレックスとテス(ローラ・ダーン)が別居することになったのは、「そろそろ終わりにしよう」という言葉からだった。その言葉がどちらから出てきたのかは忘れてしまったけれど、テスは歯磨き中だったからアレックスからだったのかもしれない。とにかくごく自然にその言葉は受け入れられ、二人は別居をすることになるのだ。
具体的に何が原因になったのかはわからない。どちらかが浮気をしたとかではないのだが、なぜかいつの間にか距離ができていたということらしい。アレックスは離婚危機のもやもやを客の前で赤裸々に話すことになり、その話によって映画を観ている側も彼が抱えている問題を知ることになっていくのだ。
ところがそんな現場にテスが現れてしまう。アレックスのネタはすべてテスとのいざこざについてだ。これは当人がいないからこそ笑えるわけだが、実はアレックスの知らぬ間にその当人がそれを聞いてしまうことになる。
しかしながら、言いたいことを相手にぶちまけたことがよかったのか、不思議なことに「雨降って地固まる」とばかりに二人の間は復活することになってしまう。それでも周囲の目を気にして、別居中の関係を装うことになり、人の目を忍んで夫婦が逢瀬を重ねるという妙なことになっていくわけなのだが……。

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結婚って大変!
本作を観ると、独り身の者としては他人事としてアレックスの苦労を笑っていられるところがあるけれど、もしかすると結婚している人は身につまされるところがあるのかもしれない。
結婚というものは恐らくどこの夫婦も似たようなものなのか、アレックスとテスが別居したことを知ると、友人のボールズ(ブラッドリー・クーパー)とクリスティーン(アンドラ・デイ)夫婦にも危機が訪れたりもする。彼らには別居によって二人が自由を獲得したように見えたということらしい。
アレックスとテスが「ヨリを戻した」という話を聞いた誰かは、そんなことはひり出したクソをもう一度元に戻すのと同じことだとか酷い言い方をしていたけれど、結婚生活というのは誰にとっても大変ということらしい。
アレックスはもともと話の面白い人だったようだ。ただ、日々の生活の中では退屈な夫になってしまっていたらしい。そうなるとテスも不機嫌になり、二人の間には沈黙が流れたりする。そういう時間が二人の関係をダメにしてしまう。
ところがスタンダップコメディをきっかけにして“何か”が変わる。テスとしては、ステージ上で笑いをとっているアレックスに惚れ直した部分もあるらしいのだ(アレックスは浮気の告白までしているのに)。それでも根本的な問題は解決してなかったようで、二人は復活した後にまたひとつの修羅場を迎える。
テスの不満はアレックスが過去の自分ばかりを見ていることにあったようだ。テスは元バレーボールの選手で、アレックスはそんな彼女に惹かれ、今でもその昔の彼女の姿を追っているところがある。しかしテスはもう現役を引退したわけで、かつてと同じではない。にもかかわらずアレックスが無神経に現役時代の写真を自慢げに飾ったりしているのがテスには許せないのだ。

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これは言ってみれば、「愛には理由などない」ということかもしれない。美しいから愛しているというのでは、それが失われれば愛は消える。そんな愛ならいらないということなのだろう。それがテスの「幸せ」と「不幸」に関する名言に表れている。
一緒に幸せになろうというのは当たり前なのだ。そうではなく、不幸になっても一緒にいたいと思えるのがテスの考える愛ということなのだろう。面倒と言えば面倒だけれど、愛ってそんなものなのかもしれない。
正直に言えば、本作は誰が観ても楽しいという作品ではないのかもしれない。基本的には会話劇なのだけれど、その話の中身が日本人にはピンと来ない部分も多いのだ。さらにはジョン・カサヴェテスの『フェイシズ』みたいに極端なクローズアップで顔に迫る場面も多く(ステージ上のアレックスの描写)、取っつきにくいところがある気もする。
それでも結婚というものは題材としては面白い。しかも本作は実話がもとになっているらしい。劇中には「結婚に葬られた」なんて台詞まであるけれど、そんな結婚に対処しようとする大人たちの姿は真剣で、だからこそ傍から見ていると微笑ましく思えるところがあるのだ。




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