監督は『ワンダヴィジョン』のマット・シャンクマン。
主演は『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』のペドロ・パスカル。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第37作。
物語
宇宙でのミッション中のアクシデントで、特殊な能力を得てしまった4人の宇宙飛行士。天才科学者であり、チームのリーダー、リード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティック(ペドロ・パスカル)は、身体がゴムのように伸縮自在となる能力と卓越した知性と発明の才能を持つ、チームのリーダー的な存在。リードのパートナーであるスー・ストーム/インビジブル・ウーマン(ヴァネッサ・カービー)は、身体を透明化する能力の持ち主で、チームの精神的支柱としてメンバーを支えるしっかり者。スーの弟、ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチ(ジョセフ・クイン)は、全身を炎に包み、高速で空を飛ぶことができる、若く陽気なチームのムードメーカー的存在。そして、リードの親友で、岩のような強固な身体を持つベン・グリム/ザ・シング(エボン・モス=バクラック)は、たぐいまれなる怪力の持ち主。そんな特殊能力を持つ4名で構成された彼らは、ニューヨークのバクスター・ビルに拠点を置き、時には“家族”、時にはヒーローチーム“ファンタスティック4”として活躍している。
(公式サイトより抜粋)
ヒーロー多すぎ?
“ファンタスティック4”というのは、マーベル作品の中でも人気のヒーローであり、Wikipediaによれば「アメリカのコミック史上初のチームとして誕生したスーパーヒーロー・チーム」なのだそうだ。すでに何度か映画化もされていて、そちらは以前に観たのだが、リーダーであるミスター・ファンタスティックの能力が「身体がゴムのように伸びるだけ」というところがちょっと意外にも思えた。
原作者は自由に能力を設定できるはずなのに、なぜそんな奇妙な能力を選んだのか。特段その能力が活かされている感じもしなかったので、そこが気になったりもした。とはいえ、“ファンタスティック4”というヒーローは、個々人の力というよりは、チームで力を補い合っているところもあるから、リーダーの役割は科学者として優秀だからそれでいいのかもしれない。
“ファンタスティック4”はリーダーのリード・リチャーズ(ペドロ・パスカル)が、精鋭たちを選んだらしいのだが、それがたまたま親友ベン(エボン・モス=バクラック)と、自分の妻スー(ヴァネッサ・カービー)と、その弟のジョニー(ジョセフ・クイン)という構成になったということらしい。そして、『ファンタスティック4:ファースト・ステップ』では、そこにリードと奥さんスーとの間の子供が加わることになる。このチームは家族であることが強調されていて、ジョニーとベンは赤ん坊フランクリンのおじさんとしていつも一緒に暮らしていくのだ。
それから本作はMCUの第37作としてカウントされている。また新たなヒーローチームができたりしたら、地球はヒーローたちで大渋滞を起こしてしまうんじゃないかとも思っていたのだが、アベンジャーズが活躍していた世界とは別の世界ということらしい。
アベンジャーズがいた世界はアース616とされていて、本作の世界はアース828になるのだとか。だからこの世界の地球にはヒーローは“ファンタスティック4”だけしかいないため、彼らは特別な人気者になっているのだ。さらに時代設定が1960年代となっていて、いわゆるレトロフューチャーな懐かしい感じの世界を見せてくれる。

©2025 20th Century Studios / © and TM 2025 MARVEL.
大掛かりな“トロッコ問題”
“ファンタスティック4”は様々な敵と闘ってきたらしい。そのあたりはうまくダイジェストで処理されている。すでにヒーローとして活躍し始めて4年が経ち、彼らを特集したテレビ番組の中で、そうした活躍が紹介されることになるのだ。
それでは本作で“ファンタスティック4”が何をするのかと言えば、家族に赤ちゃんを迎えるための準備に取り掛かる。コンセントを塞いだりとか、ベッドを組み立てたり、ヒーローたちが総出で赤ちゃん対策に奮闘するのだ。ところが、唐突に夜空から銀色のサーフボードに乗った何者か(シルバーサーファーというらしい)が現われ、地球の危機を告げることになる。地球を滅亡させることになる敵はギャラクタスというらしい。
“ファンタスティック4”は、地球の危機のために立ち上がることになるのだが、ギャラクタスが出した地球を救うための条件というのは、リードとスーの子供フランクリンを差し出せということだった(フランクリンには何かしらの凄い能力があるということをギャラクタスは理解したらしい)。
もちろん“ファンタスティック4”としては、家族の一員を差し出すことを認めるわけにはいかない。かといって、地球を差し出すこともできないわけで、ジレンマに陥ることになる。
言わば大掛かりな“トロッコ問題”が、ヒーローたちに課されることになるわけだ。すべての人類のために、自分たちの家族のひとりを犠牲にすべきか。あるいはその逆に、家族を守るためなら、人類のことなど放っておくべきか。尤も、“トロッコ問題”に正しい答えなどないわけで、“ファンタスティック4”は「一体、どうすべきか?」ということになる。

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つなぎの1作?
とにかく壮大な話になっている。ギャラクタスというのはこの宇宙よりも前から存在しているという、われわれよりも上位にいる“何か”らしい。そのギャラクタスは飢えていて、地球を喰らって飢えをしのごうとする。どこか『エターナルズ』の設定ともよく似ていて、壮大なところはワクワクさせてくれたけれど、ギャラクタスの造形は日本の特撮映画『大魔神』のそれのようにも見えなくもなかった。
そんなわけで、放っておけば地球はギャラクタスに喰われてしまうわけで、どうにかしなければならない。リーダーであるリードは、地球を宇宙のどこかほかの場所へと瞬間移動させるという秘策を捻り出す。
「地球をお引越しさせてしまおう」というアイディアは、『三体』の原作者が書いた短編小説を映画化した『流転の地球』や、その前日譚『流転の地球 太陽系脱出計画』にも描かれていた。SFの世界ではそれほど珍しくはないのかもしれないけれど、壮大な話になっていることは間違いない。
結局、それはうまくいかずに別の方法が採られることになるのだが、印象的だったのは「母は強し」ということだろう。ギャラクタスの力と唯一対抗できていたのは、スーの念力みたいなものだった。これもフランクリンを守るという母の強い意志があればこそということだろうか。父親のリードが現実的にフランクリンを犠牲にすることを考慮しないこともなかったのに対し、母親のスーはそんなことは微塵も考えていなかったのだ。

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仲間たちのジョニーやベンにも見せ場があるけれど、最終的にはシルバーサーファーが助けてくれる。というのは、彼女も家族のためにギャラクタスの家来みたいなことをやっていた犠牲者だったからだ。そんなわけで「家族」ということが本作のテーマになっていて、感動的な泣かせる話となっている。
ただ、単独の作品としてみると、それなりには楽しめるけれど、新ヒーローの紹介に留まっていたようにも思えた。結局はこの後の展開でアベンジャーズたちとつながってくることになるのだろうし、そこが一番の盛り上がりを見せるところになるのだろう。本作はそのための「つなぎの1作」みたいになっていることは否めない気もする。






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