原作は同名のゲーム。個人製作されたゲームとしては異例のヒット作ということらしい。
監督・脚本は『百花』の川村元気。
主演は『浅田家!』の二宮和也。
物語
蛍光灯が灯る無機質な白い地下通路を、ひとりの男が静かに歩いていく。いつまで経っても出口にたどり着くことができず、何度もすれ違うスーツ姿の男に違和感を覚え、自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づく。そして男は、壁に掲示された奇妙な「ご案内」を見つける。「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から、外に出ること」。男は突如として迷い込んだ無限回廊から抜け出すべく、8番出口を求めて異変を探すが……。
(『映画.com』より抜粋)
無限ループに閉じ込められる
原作とされているのはゲームなのだとか。ゲームはほとんどやらないので知らなかったけれど、結構売れたゲームで話題にもなったらしい。「異変を見つけたら引き返す」というのが基本的なルールで、何とか8番出口から脱出することを目指すらしい。
地下鉄の無機質な通路を舞台にしているというのがキモなのだろう。誰もいない地下鉄の通路を歩いたりする機会もあるけれど、世界に誰もいなくなってしまったような感覚に襲われることがある。そんなところに閉じ込められたら怖いだろうというのが最初のアイディアなのだろうか。
映画版の『8番出口』はそんなゲームを忠実に再現しているっぽい。異変というのは様々で、通路のポスターが変わっているといった些細なことだったり、いつも通路の反対側から歩いてくるおじさん(河内大和)が急に笑いかけてきたりして驚かされたりもする。ホラー映画的なジャンプスケアもちょっとだけ用意されていて、それなりに楽しませてくれる。
ただ、それだけでは映画化としては弱いというわけで、映画には新しく付け加えられた物語がある。ゲームの「8番出口」は、地下通路から抜け出すことができればゲームクリアということだったのだろうけれど、映画としてはその地下通路そのものに何かしらの意味を見い出そうということなのだろう。

©2025 映画「8番出口」製作委員会
悩み迷う主人公
冒頭、主人公の迷う男(二宮和也)は地下鉄に乗っている。音楽を聴きながらスマホを見ていると、どうも赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。そして、それに対して「赤ん坊を黙らせろ」などと、赤ん坊以上に騒々しい怒鳴り声を上げている男がいる。傍迷惑な客に周囲は困惑しているけれど、誰もそれをどうにかしようとはしない。主人公もイヤな気持ちになりながらも、再びイヤホンをして自分の世界へと戻ることになる。
そこに別れた彼女(小松菜奈)から電話がかかってくる。彼女は病院にいるという。そして、「赤ちゃんができた」と打ち明けるのだ。突然のことで主人公は戸惑う。それに対してどう応えればいいのか、困惑し焦ったからか、持病の喘息の発作がきて、息苦しくなってくる。
そんなこんなで主人公は地下鉄から出ようとするものの、なぜかいつまで経っても出口が見えてこない。そんなふうにして主人公は無限ループの世界へと入り込んでしまう。つまりは地下通路という無限ループは、主人公の悩める心の内を示しているということなのだろう。
「八方塞がり」とか「袋小路」とか、そんな逃げ場がない状態の言葉を映像化したら地下通路になるということだろうか。というよりは、地下通路から連想されたものが、そうした言葉ということなのだろう。それが子どもを持つことに対しての不安に駆られている主人公の気持ちということになる。
彼女のほうも決められないと漏らしていたけれど、主人公のほうはもっと追い詰められている。その逡巡が堂々巡りのような地下通路ということなのだ。途中から二人の子どもと思しき少年(浅沼成)も登場する。その少年を守ると決断するまでの過程が本作ということになる。

©2025 映画「8番出口」製作委員会
器用にまとめているけれど……
川村元気の監督作は初めてなのだけれど、器用な人という印象だろうか。作品全体のイメージカラーとして黄色をうまく使っていてビジュアル的に映えるし、ボレロの繰り返しの旋律がループを題材にした本作ともうまくマッチしている。エンドロールの作りも気が利いていたし、公式サイトも凝った作りをしていて、サイト自体にゲーム性があったりする。
あとはちょっとだけ悩める主人公の心象風景を追加すれば、あっという間に1本の映画の出来上がりということだろうか。そんなわけで感心はするものの、何だかそんな戦略が透けて見えるような気もして、物語として惹き込まれるようなものはあまりなかった気もする。
私が本作を観た劇場では、なぜか子どもたちの姿が多かった。子どもたちは正直で、繰り返しが多くなる中盤からは退屈してしまったようで、トイレに立つ子なども多かった。本作はどう見ても子ども向けの映画ではないのに、なぜ子どもたちが多かったのかは謎だけれど、子どもからしたら主人公が何を悩んでいるのかよくわからないんじゃないかと心配してしまった。
主人公は地下鉄から降りて自分の内面とも言えるループの世界へ入っていったけれど、最終的にはまた地下鉄の人混みの中へと戻っていく。そして、冒頭と同じく赤ん坊に対して怒鳴っている男に遭遇することになる。子どもを育てるということは、そうしたことにも立ち向かわなければならないということらしい。「ちょっと違うんじゃないか」と思わなくもないけれど、キレイにまとめようとした結果ということだろうか。





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