監督・脚本は『ドント・ブリーズ』などのフェデ・アルバレス。
製作には記念すべき第1作『エイリアン』の監督であるリドリー・スコットも名前を連ねている。
主演は『プリシラ』などのケイリー・スピーニー。
物語
人生の行き場を失った6人の若者たちが、生きる希望を求めて足を踏み入れた宇宙ステーション“ロムルス”。 だが、そこで彼らを待っていたのは、恐怖と言う名の絶望──寄生した人間の胸を突き破り、異常な速さで進化する “エイリアン”だった。 しかも、その血液はすべての物質を溶かすほどの酸性のため、攻撃は不可能。 宇宙最強にして最恐の生命体から、彼らは逃げ切れるのか?
(公式サイトより抜粋)
ロムルスの片割れは?
『エイリアン』シリーズの最新作。アメリカではかなりのヒットになっているとのことで、続編が製作されそうな勢いということらしい。確かにエンタメとしては十分におもしろい。それでも個人的には過去作の焼き直しに感じられる部分が多いような気もした。
焼き直しというのは言い換えればオマージュということにもなるわけで、本作は過去作のいいとこ取りであり、リブート作品みたいな趣きもあった。
時系列としては、第1作の『エイリアン』とその続編『エイリアン2』の間の時期という設定で、ノストロモ号の残骸が回収された場面から始まることになる。
タイトルがローマの由来となったとされる双生児の片割れの「ロムルス」となっているのは、もう一方の片割れとして第1作あるいは『エイリアン』シリーズ全体をイメージしているということなのかもしれない。『エイリアン』シリーズの仕切り直しをして、別バージョンを見せようという意図なのかもしれない。
『エイリアン』シリーズを振り返ってみれば、前日譚を除けば第4作まで作られたことになる。こちらの主人公はずっとリプリーだ。リプリーは毎回エイリアンに遭遇してしまうという気の毒な人だけれど、唯一の生き残りとしてエイリアンの生態を知っていることになるわけで、初めてエイリアンと遭遇した人とは立場が異なる。
そうした意味では、『エイリアン:ロムルス』は第1作とよく似ているのかもしれない。本作の主人公レイン(ケイリー・スピーニー)たちは何も知らない若者だからだ。
彼女たちは劣悪な環境の植民地で働かされていて、そこを抜け出してユヴァーガという星に行きたいと願っている。そのためには冷凍睡眠のための装置が必要で、それを盗み出すために宇宙ステーションの「ロムルス」に潜り込むことになる。そこでエイリアンと遭遇することになってしまうのだ。
リブート作品?
本作は未知の生物と遭遇した者が、次第にその生命体の恐ろしさを思い知ることになる点で、『エイリアン』の展開をそっくりなぞっている。
卵の状態のところは出てこなかったけれど、フェイスハガーはわらわらと登場し、若者のひとりが例によって卵を産みつけられる。もちろん胸を食い破ってチェストバスターが顔を出すという、あのトラウマシーンもある。さらにエイリアンの血が強酸性で何でも溶かしてしまうことに驚くことになるし、最終的には成体であるゼノモーフもぞろぞろと出てきて若者たちを殺戮していくことになる。
オリジナルの『エイリアン』とほとんど同じことを丁寧に繰り返している(続編からのネタも色々ある)。レインたちは初めてエイリアンに遭遇したという設定なわけで、『エイリアン』シリーズをまったく見ていなくても楽しめる内容になっているのだ。そんな意味で、『エイリアン』のリブートみたいな趣きがあるというわけだ。
その第1作『エイリアン』に登場していたアッシュそっくりのアンドロイドが再び登場するところとも、第1作を想起させることになっている。
このシリーズはアンドロイドも重要な役割を果たすことになっていて、『エイリアン』では悪いアンドロイド・アッシュが登場し、それを演じていたのがイアン・ホルムだった。今回のアンドロイドの名前はルークとされているけれど、アッシュと同じ型ということなのかもしれない。かつてアッシュを演じたイアン・ホルムはすでに亡くなっているけれど、それをCGで蘇らせた形になっているのだ。
『エイリアン2』では、それとは逆に良いアンドロイドが登場したりもした。本作のアンディ(デヴィッド・ジョンソン)はその両方を兼ね備えている。最初はレインを守ることだけを指令された、ダジャレ好きの“人のいい”感じのアンドロイドなのだが、エイリアンと遭遇してしまい必要に駆られてモジュールを付け替えるとキャラが変わる。任務のためには人間を犠牲にしかねない冷酷なキャラになってしまうのだ。
アンドロイドを嫌っている人間がいるのも過去作と同様で、こういうあたりも過去作のおもしろいところをうまくつまんでいる感じを抱かせる。
温度差で獲物を把握しているフェイスハガーに見つからないように室温と体温を一緒にした“かくれんぼ”のようなハラハラするシーンがあったり、重力を操作したちょっと珍しいアクションなど見せ場も多く、エンタメとして満足させてくれる内容になっていると言えるだろう。
※ 以下、色々とネタバレもあり!
人間の進化した姿?
ただ、オリジナルの『エイリアン』が評価が高いのは、単なるモンスター・パニック映画には終わってなかったところであり、そういう点からすれば、本作はやはり物足りない気もした。
H・R・ギーガーが生み出したエイリアンの造形は、性的なモチーフに溢れていて、様々な解釈ができる。たとえばチェストバスターが出てくる場面は、「妊娠と出産」をイメージさせる部分があるとされたりもする。それだけエイリアンのキャラクター造形が秀逸だったということなのだろう。
そこからすると本作の最後に顔を出すアレはどうなんだろうか? とはいえすでに『エイリアン4』では似たようなニューボーンというキャラが登場していたわけで、これも過去作のオマージュということなのかもしれないけれど……。
『エイリアン4』の最後にニューボーンが出てきた時は、何だか酷くガッカリした気がする。だからなのかどうかはわからないけれど、オリジナルの創始者のひとりであるリドリー・スコットは、わざわざ前日譚である『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』を作って、エイリアンの完成態の作り方を描いていた。それなのに、そこからまた逆戻りするようなアレが登場したので、またガッカリというか唖然としてしまった。人間を進化させるとか言いつつも、ゲテモノにしか見えなかったのだ。
多分、本作には続編が作られるのだろうし、『エイリアン』シリーズはテレビドラマ化もすでに決まっていて、そちらももうすぐ始まるらしい。舞台は地球になるということで、このシリーズのエイリアン攻略法として一番有効だった宇宙へ吹き飛ばすという方法が使えないわけで、一体どうするつもりなのかはちょっと気になる。
それでもそんなに立て続けにエイリアンに遭遇していると、もはや『13日の金曜日』のジェイソンみたいな殺人鬼キャラなどとどこが違うのかという気持ちにもなってくるのだ。エイリアンは“完全生物”を謳っているわけで、出てくる度に退治されていてはその名が廃るというものだろう。そのあたりはどうするつもりなのだろうか?
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